学生生活協議会(学生協)は従来から本学の学寮に係わる諸問題を解決する努力を続けてきました。その過程で、学寮の在り方について短期的?中期的観点から展望し検討を加える必要があると判断して、平成11年5月に、「学寮の在り方検討委員会」を学務等担当副総長の諮問委員会として設置しました。同委員会は平成12年2月までの審議の結果を「検討結果」として、学務等担当副総長に答申しました。
副総長はこの答申を学生協に付議し、学生協はその「検討結果」の大枠を承認するとともに、部局からの意見も求めて検討し、結論を得ました。その基本的内容は7月の評議会において了承されています。それは、老朽寮が置かれた現在の深刻な状況への強い懸念を示し、従来の施設が果たしてきた役割を今後も生かす方策を求め、他方で新たな発想に基づく施設を提案するものです。
学生協は、評議会において了承された基本的な考え方について、『学生協だより』によって全学の皆さんにお知らせすることにしました。この号では、従来から目指している新寮建設について現状をお知らせし、併せて、学寮の枠を越えて未来を志向する新しい施設の概念を提案したことをご紹介します。
本学には、本年9月1日に焼失した昭和舎を含めて8つの学寮が、市内5ヵ所に点在していました。現在は7寮が4ヵ所にあります。現在の定員は全体で892名であり、入居している寮生は約700名です。7寮のうち如春寮(定員64名)だけが女子寮であり、他には女子の入寮は出来ません。
これらの学寮に関する諸問題について、学生協は従来からその解決のための努力を続けています。特に木造の有朋寮(昭和28年開寮、仙台市太白区鹿野2丁目)の老朽化への対策は大きな検討課題です。この有朋寮と焼失する前の昭和舎(昭和15年開寮、仙台市青葉区柏木3丁目)の老朽化については、明善寮?如春寮?松風寮と同様の方式による新寮建設によって対応することになり、平成7年に文部省に対して予算要求をして以来、毎年要求を続けています。しかしながら、学生寮自治会連合(寮連)がこの新寮計画に反対していること等により、新寮建設は進展していません。この間にも老朽化が進んでいます。また、昭和舎については、焼失した建物に代わる施設の検討が課題となりました。
今、新しい世紀を控えて大学を取り巻く環境が変化し、それに伴って大学の在り方や学生にも様々な変化が起こっています。学生の経済的な状況や生活様式及び集団生活に対する意識が変化し、学生の構成においても大学院生?女子学生の比率が飛躍的に上昇し、留学生数も著しく増加しています。
現在の学寮については、入寮定員枠の適切な運用など、このような変化に対応した運営がなされるべきであることはもちろんのこと、この状況を踏まえて新寮建設を進める必要があります。学生協は今後もその努力を続けることを確認しています。
現在の大学を取り巻く厳しい競争的な環境の中で、本学が内外の優秀な学生?大学院生?研究者を惹きつける魅力を持った大学?大学院として存続するために、今までにもまして、優れた研究?教育の成果を社会にまた世界に発信してゆくことが必要です。またこれからの学問研究においては、学際化?国際化がますます進展するために、情報の流通がよりいっそう重要な役割を担うことは明白です。本学が卓越した研究?教育拠点としてあり続けるためには、今後さらに研究?教育上の交流を活発にしてゆかなければなりません。
それらを推進するにあたって、インターネット等の情報通信環境の整備とその利用は当然ですが、研究?教育の場では、いわゆる "face to face" のコミュニケーションは有力な情報交換の媒体として依然として不可欠であり、そのための環境整備が急務です。したがって、本学に短?中期的滞在を求める国内外の研究者が利用できる施設、国際会議を含む研究集会や研究交流を行うに適した場、今後ますます進展するであろう学際化?国際化をリードできる人材を育てる場が提供されなければなりません。
すなわち、「高度の知的交流の機会」と「質の高い生活環境」を提供する機能を持ち、東北大学を訪問する国内外からの研究者及び東北大学の研究者?大学院生?学部学生?留学生が利用できるような施設の構想を推進します。この施設を、研究?教育交流宿泊施設「ユニバーシティーハウス」と呼びます。
この施設では、専門分野内の研究交流はもちろんのこと、日本人と外国人が互いの文化を理解しあい、異なる分野の学問を論じあい、若者と最先端の研究者が互いに影響しあうことができます?また、この施設は大学が位置する地域社会との研究?教育上の交流を深めるためにも活用できることが望ましいと考えます。
このような夢のある、広い可能性をもつ、未来志向の施設を具体化するまでには、多くの課題について検討が必要です。この発想に基づく施設の構想検討については、評議会の下に設けられる委員会で審議される予定です。
本号では、学寮の諸問題の中で特に新寮建設に関する状況をお伝えし、併せて、ユニバーシティーハウスという新しい施設の概念を提案したことを述べました。今後、いずれの事柄についても具体的な方策や構想を決めていく論議が必要です。そのための建設的な意見がひろく求められます。
最後に、この機会を借りて、昭和舎の火災で被害を受けた学生諸君にお見舞いの言葉を述べるとともに、火災への対応や学生の支援に力を尽くされた医学部、医学部附属病院をはじめ多くの皆様に、心からのお礼を申し上げます。
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