2023年 | プレスリリース?研究成果
光と電気どちらでも書き込める不揮発性磁気メモリ材料を開発 - シンプルなデバイス構造で外部磁場不要の磁化反転を実現 -
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻
教授 好田 誠
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 半導体集積回路は消費電力増大や配線遅延の問題を抱えており、光配線など光を利用した高速?低消費電力化の取り組みがなされている。
- 光と電気どちらでも情報を記録できる実用的な材料は無く、光と電気の高度な融合を目指す上でボトルネックとなっていた。
- 光で情報記録が可能なコバルト/白金を用いて、電流による効率的な磁化反転を実現し光電融合が可能な不揮発性磁気メモリ(注1)材料の開発に成功した。
- 光と電気信号を同時活用する高速?大容量サーバーやリアルタイム処理が必要なエッジデバイスの情報記録として期待できる。
【概要】
現在の半導体集積回路やメモリ素子では、微細化に伴い電力増大や配線遅延といった課題が顕在化し、光配線など高速?低消費電力化が可能な光技術との融合が進められています。今後爆発的に増大する情報を高密度かつ省電力で記録するには、光ファイバーからの光信号と集積回路からの電気信号どちらを用いても情報の書き込みおよび読み出しができる新たな材料が必要です。
東北大学大学院工学研究科の好田誠教授(量子科学技術研究開発機構量子機能創製研究センター グループリーダー)、新田淳作名誉教授、柳淀春博士後期課程学生(研究当時)らは、韓国科学技術院(KAIST)およびマサチューセッツ工科大学(MIT)と協力して、単純な強磁性/非磁性2層構造である単結晶コバルト/白金構造が外部磁場を用いなくても電流注入で磁化反転が可能であることを示しました。コバルトと白金の積層構造は、光照射によりコバルトの磁化が反転する材料としてこれまで知られていましたが、無磁場で電気的に磁化反転ができることは分かっていませんでした。光で情報記録が可能であるコバルト/白金構造が、今回電気でも効率的に情報記録できることを示し、光ファイバーからでも電気配線からでもデータを蓄積できる光電融合が可能な不揮発性磁気メモリ材料の開発に成功しました。
本手法により、光と電気信号を同時活用する高速?大容量サーバーやリアルタイム処理が必要なエッジデバイスの記録材料として期待できます。
本研究成果は、2023年7月2日付(ドイツ時間)で材料分野の専門誌Advanced Functional Materialsにてオンライン公開されました。
図1. (a)単結晶Co/Pt磁化反転素子の模式図と(b)多結晶および単結晶Coを用いた場合のスピン注入磁化反転結果。単結晶Co/Pt構造のみ外部磁場なし(Bx=0)で磁化反転している。
【用語解説】
注1 不揮発性磁気メモリ
磁石の薄膜を記録層に用いたメモリ。磁石のN極とS極に対して「0」と「1」の情報を記録し、磁気抵抗効果を用いて読み出す記録素子。電源を切っても磁石の向きは保持されるため不揮発性を持ち省電力メモリ素子として期待されています。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻
教授 好田 誠
TEL: 022-795- 7316
Email: makoto*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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