本文へ ナビゲーションへ
ここから本文です

金属ナトリウム蒸気を利用した半導体セラミックスの低温焼結技術を開発 ―従来法よりも500 °C低温で相対密度90%以上を達成―

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所
助教 細野 新
教授 山田 高広
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • チタン酸バリウム(BaTiO3)の粉末成形体(注1を少量の金属ナトリウムと共に加熱すると、緻密な半導体セラミックス(相対密度(注296%以上)が従来法よりも500°C 低い、700?800 °Cで得られる現象を発見しました。
  • 加熱時に発生するナトリウムの蒸気が、遷移金属イオン(Ti4+)の還元と、焼結促進の両方の作用をもたらすことを明らかにしました。

【概要】

チタン酸バリウム(BaTiO3)は、主要なセラミックス電子材料であり、半導体や誘電体(絶縁体)として幅広く利用されています。

東北大学多元物質科学研究所の細野新助教と山田高広教授の研究グループは、BaTiO3の粉末成形体を、金属ナトリウム片と共にステンレス鋼製の容器に封入し加熱することにより(図1)、従来法(約1300 °C)よりも大幅に低い700?800 °Cの低温で、電気抵抗率の低下を伴いながら緻密に焼結(注3する現象を発見しました。この手法では、ナトリウム蒸気がステンレス鋼製容器内のBaTiO3を均一に焼結させるため、一度の加熱処理で20個以上のセラミックスを作製することが可能です。さらに、セラミックス中の粒子の形態は加熱条件により制御可能であり、焼結温度と保持時間により粒子のサイズや形状が変化することが分かりました(図2)。

本研究は、材料の半導体化と焼結を低温で達成することで、セラミックス製造コストの低減につながるとともに、チタン酸バリウム以外の様々な材料の焼結への応用が期待されます。

 本研究成果は、2025年12月16日付けで、米国セラミックス協会の学術誌Journal of the American Ceramic Societyに掲載されました。

図1. 焼結実験用の試料容器内の模式図

【用語解説】

注1. 粉末成形体: 加圧により、粉末を所望の形状に成形したもの。

注2. 相対密度:セラミックス等の緻密さを示す指標。空隙がまったく無い場合の相対密度は100%。

注3. 焼結:セラミックスや金属の粉末を緻密に焼き固めるプロセス。

【論文情報】

タイトル:Low-temperature sintering of BaTiO3-based semiconducting ceramics using sodium vapor
著者:細野 新*、山田 高広
*責任著者:東北大学 多元物質科学研究所 助教 細野 新
掲載誌:Journal of the American Ceramic Society
DOI:10.1111/jace.70468

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所
助教 細野 新(ほその あきら)
TEL: 022-217-5814
Email: akira.hosono.a7*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs09

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています