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老朽化と人口減少に直面する下水道の最適解を導く ―集中ベストミックスを算出する新たな手法を開発―

【本学研究者情報】

〇工学研究科土木工学専攻 助教 大石若菜
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 人口減少社会を見据え、下水道の集中型と分散型の最適な組み合わせを定量的に導くことができる新たな枠組みを提案しました。
  • 費用?温室効果ガス排出量?バイオガス回収量を統合的に評価し、費用と環境負荷を同時に低減できることを明らかにしました。
  • 本成果は、安全性と快適性を維持しつつ、持続可能で高効率な下水処理システムの構築に資するものです。

【概要】

埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、暮らしを支える基盤である上下水道インフラが老朽化により危機的な状況にあることを浮き彫りにしました。施設の老朽化が進む一方で人口減少が加速する将来において、誰一人取り残さずに上下水道サービスを維持するためには、従来の"大規模集中型"の仕組みだけに依存せず、地域の人口規模に応じて"集中型"と"分散型"の汚水処理技術を柔軟に組み合わせたシステムを実装していくことが求められます。さらに、公衆衛生の向上、浸水防止、水質保全に加え、脱炭素社会への貢献など、多様な社会的要請にも対応する必要があります。

東北大学大学院工学研究科の大石若菜助教、水谷大二郎准教授らは、スウェーデン農業科学大学(Swedish University of Agricultural Sciences)との共同研究により、既存の大規模下水道インフラの縮小(ダウンサイジング)と分散型技術の導入を組み合わせた最適な「集中分散ベストミックス」を導出する新たな数理モデルを構築しました。

本研究は、人口減少社会における下水道インフラ更新のあり方を世界に先駆けて示したものであり、長期的な人口動態を見据えた計画的なダウンサイジングと数理的根拠に基づく技術選択により、日常生活における安全性と快適性を維持しつつ、高効率かつ全体最適化された下水処理システム構築に資する成果です。

本成果は12月11日に、水分野の学術誌Water 虎扑电竞に掲載されました。

図1. 世帯あたりの更新?維持管理費用と世帯密度の関係。個別処理と集合処理の交点は、両システムの費用が均衡する世帯密度である。均衡点よりも低い世帯密度では個別処理、均衡点よりも高い世帯密度では集合処理が経済的であることを示しており、「下水道を更新する上での世帯密度の目安」と解釈できる。この図から、下水道の更新には、人口減少率が高いほど施設使用開始時点において高い世帯密度が必要であることがわかる。

【論文情報】

タイトル:Adapting Sanitation Systems to Demographic Transitions: Optimizing Hybrid Configurations of Sewered and Non-Sewered Solutions
著者:Wakana Oishi*, Daijiro Mizutani, Yuto Nakazato, Jennifer McConville, Daisuke Sano
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 助教 大石若菜
掲載誌:Water 虎扑电竞
DOI:10.1016/j.watres.2025.125135

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
助教 大石 若菜
Email: wakana.oishi.d1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科
情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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