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網膜中心動脈閉塞症の新たな治療薬開発へ ―医師主導治験でカルパイン阻害薬SJP-0008の安全性と有効性を確認―

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科眼科学分野 教授 中澤徹
大学院医学系研究科眼科精密医療開発分野 准教授 津田聡
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 網膜中心動脈閉塞症(注1は突然発症し、重篤な視力低下を来たし、有効な治療法がありません。
  • 医師主導治験(第Ⅱ相)において、神経保護作用が期待されるカルパイン(注2阻害薬SJP-0008(注3の安全性と有効性を評価しました。
  • SJP-0008の内服によって、視力が改善することが示唆されました。
  • 現在、網膜中心動脈閉塞症に対するSJP-0008の有効性と安全性を検証する第Ⅲ相試験が実施されています。

【概要】

網膜中心動脈閉塞症は、網膜を栄養する主要な血管である網膜中心動脈が血栓によって閉塞することで発症します。網膜は視覚に関わる重要な神経であるため、血流が途絶えると突然見えなくなり、発症後2?3時間で不可逆的な視力低下に繋がります。まさに、眼の脳梗塞のような疾患です。有効な治療法は確立されておらず、新しい治療法の開発が望まれています。

SJP-0008(内服薬)は、網膜の神経細胞を保護し、視機能低下を抑制する神経保護薬として開発が進められています。東北大学大学院医学系研究科眼科学分野の中澤 徹教授、津田 聡准教授らの研究グループは、網膜中心動脈閉塞症の新しい治療法を開発するために、SJP-0008の安全性と有効性を評価するための医師主導治験(第Ⅱ相)を行いました。本治験では、SJP-0008を1ヶ月間の内服した際に、安全性上の大きな問題は認められず、5段階(注4以上の視力改善が認められました。

現在、SJP-0008の有効性と安全性を検証するための第Ⅲ相試験が実施され、新規治療薬として開発が進められています。

本研究成果は、2025年10月9日付でOphthalmology Science誌に掲載されました。

図1.  ベースラインからの視力変化
治験に参加した時点からの視力(ETDRS文字数)の変化量。SJP-0008 100 mg群とSJP-0008 200mg群は、対照群と比較して視力改善が大きいことが示されている。SJP-0008 200 mgは対照群と比較して、統計学的に有意な視力改善が得られている(*)。

【用語解説】

注1. 網膜中心動脈閉塞症:網膜中心動脈が閉塞によって発症する。突然の視力低下を来たす重篤な眼疾患。

注2. カルパイン:細胞内に存在するタンパク質分解酵素。様々な生体反応に関与している。細胞に障害が加わると過剰にカルパインが活性化し、細胞内のタンパク質を次々と分解し、組織を障害する。心筋梗塞?脳梗塞などの血流障害、アルツハイマー病?パーキンソン病などの神経変性疾患などとも関連性がある。

注3. SJP-0008:千寿製薬が開発するカルパイン阻害薬。

注4. 5段階:視力は治験ではEarly Treatment Diabetic Retinopathy Study(ETDRS)と呼ばれる方法により、可読できる文字数で測定される。0(小数視力0.02相当)?100文字(小数視力2.0相当)の範囲で測定され、5文字増加する毎に1段階の増加となる。5段階は25文字の増加に相当する。

【論文情報】

タイトル:Safety and Efficacy of Orally Administered SJP-0008 in Central Retinal Artery Occlusion: A Phase IIa Randomized Clinical Trial
著者:津田聡、國方彦志、橋本和軌、浅野俊文、伊藤梓、吉田光秀、安田正幸、新田文彦、中澤徹*
*責任著者:東北大学大学院医学系研究科 眼科学分野
教授 中澤徹
掲載誌:Ophthalmology Science
DOI:10.1016/j.xops.2025.100965

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
眼科精密医療開発分野 
准教授 津田 聡
TEL:022-717-7294
Email: satoru.tsuda.e3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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