本文へ ナビゲーションへ
ここから本文です

能登地震、地下の「古マグマ」の破壊が引き金に 3年間継続した群発地震が大地震につながった要因を解明

【本学研究者情報】

〇大学院理学研究科地震?噴火予知研究観測センター 准教授 髙木涼太
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 2024年能登半島地震の震源域の地下に、地震波が周囲より異常に速く伝わる高速度体(注1が存在することを明らかにしました。
  • この高速度体は、日本列島形成時の火山活動に起因する固化した古マグマである可能性が高いことがわかりました。
  • この古マグマは、当初は約3年間継続していた群発地震(注2の移動を妨げる「壁」の役割を果たしていましたが、最終的にマグニチュード6の能登半島地震を引き起こした破壊の中心となるアスペリティ(注3として機能したことが明らかになりました。
  • 地下の構造の不均質性が、各地で発生する群発地震が大地震の発生につながるかどうかを評価するための重要な手掛かりとなる可能性を示しています。

【概要】

能登半島では、2020年12月頃から活発な群発地震が続いていましたが、2024年元日にマグニチュード7.6の能登半島地震が発生しました。なぜこのような複雑な地震活動が起きたのか、なぜ群発地震が大地震につながったのか、その要因はこれまで不明でした。

東北大学大学院理学研究科の髙木涼太准教授らの研究チームは、高密度な臨時地震観測に基づく高解像度の地下構造探査により、能登半島地震の震源域の地下に、周囲に比べて地震波速度が異常に速い領域(高速度体)が存在することを発見しました。3年前から継続していた群発地震はこの高速度体を避けるように発生したのに対し、能登半島地震の主要な断層破壊はその中で発生しました。この高速度体は、固化した古マグマである可能性が高く、過去の火山活動によって地下に形成された構造とそれによる透水性の不均質が、現在の群発地震の発展や大地震の発生過程を支配した要因であることを示唆しています。

本研究成果は科学誌Science Advancesに2025年10月15日午前2時(米国東部時間。日本時間10月16日午前3時)付で掲載されました。

図1. 震源?観測点マップと臨時地震計設置時の様子。能登半島地震(黄色星)と群発地震(赤点)の震源は Yoshida et al. (2024) による。背景のカラーは能登半島地震による隆起量(Ma et al. 2024)。四角は臨時地震観測点(黒)と定常地震観測点(白)。

【用語解説】

注1. 高速度体:地震波が周囲より速く伝わる地下の領域。通常は、岩石が固く密度が高い部分に相当します。

注2. 群発地震:本震の後に余震が発生するという通常の地震活動とは異なり、明確な本震を持たずに地震が特定の地域に集中的に多数発生する現象です。地下深部の流体の関与が指摘されています。

注3. アスペリティ:地震の際に破壊される断層面の中で、特に滑りにくい領域を指します。ここに大きな歪みが蓄積し、破壊されることで、規模の大きな地震が発生します。

【論文情報】

タイトル:Rupture of solidified ancient magma that impeded preceding swarm migrations led to the 2024 Noto earthquake
著者:Ryota Takagi*, Keisuke Yoshida, and Tomomi Okada
*責任著者 東北大学大学院理学研究科 准教授 髙木涼太
掲載誌:Science Advances
DOI:10.1126/sciadv.adv5938

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科
地震?噴火予知研究観測センター
准教授 髙木 涼太(たかぎ りょうた)
TEL:022-795-3929
Email:ryota.takagi.c1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs11 sdgs15

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています