2025年 | プレスリリース?研究成果
金属クラスターの発光特性をより重い原子の内包で向上させることに成功 次世代の光機能材料の開発に貢献
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 教授 根岸雄一
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- カプセル状で、内部に他のイオンを内包させることができる新種の銀クラスター(注1)の合成に成功しました。
- 銀クラスター内部にヨウ化物イオンを内包させることで、スピン軌道相互作用(注2)が強化されて重原子効果(注3)を発現させ、発光特性が向上することを見出しました。
- 今回得られた知見は次世代の発光材料や増感剤といった光機能材料の開発に貢献するものと期待されます。
【概要】
数個から数百個の金属原子が集合した金属クラスターは特異な電子?光学特性を持つことから、発光材料や触媒、バイオイメージング用途などへの応用が期待されています。本研究では、銀(Ag)クラスターのリン光(注4)特性を向上させるために、重原子効果を利用した新規Ag54クラスターの合成に成功しました。
東北大学多元物質科学研究所の根岸雄一 教授は、東京理科大学研究推進機構の新堀佳紀 講師(研究当時)と、インド工科大学マドラス校の研究チームと共同で、中心に異なるアニオン(硫化またはヨウ素 I)を内包するX@Ag54クラスター(X = S, I)を精密に合成し、構造解析および発光特性の評価を行いました。その結果、重原子であるヨウ素を内包したI@Ag54クラスターでは、スピン軌道相互作用が強化され、項間交差(注5)が促進されることで、リン光の量子収率(注6)が16倍向上することを明らかにしました。
本研究は、金属クラスターの発光特性を制御する新たな手法を提案し、次世代の発光材料や増感剤の開発に貢献するものです。
本研究成果は2025年3月3日、ナノサイエンスとナノテクノロジーの専門誌Smallに掲載されました。

図1.(A) S@Ag54と(B) I@Ag54の化学組成と幾何構造
【用語解説】
注1. 銀クラスター:数個から数百個の銀原子が集合した微粒子。
注2. スピン軌道相互作用:電子の公転運動回(軌道)の動きと、電子の自転運動(スピン)が、お互いに影響し合うこと。
注3. 重原子効果:分子に原子番号が大きい元素を取り入れることでスピン軌道相互作用が強化される現象。分子の発光特性が変化する。特に、リン光を強める効果がよく知られている。
注4. リン光:励起状態からの緩和過程において、スピン反転を伴う発光。一般的に寿命が長く、時計の針や非常口の標識に見られる長時間発光する光もその一つ。リン光と異なる発光原理により短時間光るのが蛍光。
注5. 項間交差:分子が光やエネルギーを吸収?放出する際、電子が持つスピンの向きが変更する現象。
注6. 量子収率:発光材料が吸収した光子(光の粒)の数のうち放出された光子の数の割合。
【論文情報】
タイトル:Enhancement of Photoluminescence Quantum Yield of Silver Clusters by Heavy Atom Effect
著者:秋山葵1、Sakiat Hossain 2、新堀佳紀2,*、大岩一毅1、Jayoti Roy 3、川脇徳久1、Thalappil Pradeep 3、根岸雄一2,4,*(1. 東京理科大学理学研究科、2. 東京理科大学研究推進機構総合研究院、3. Department of Chemistry, Indian Institute of Technology、4. 東北大学多元物質科学研究所)
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 根岸雄一
東京理科大学研究推進機構総合研究院 講師 新堀佳紀(研究当時)
掲載誌: Small
DOI:10.1002/smll.202500700
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 根岸雄一
Email: yuichi.negishi.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています