2025年 | プレスリリース?研究成果
2023年以降、三陸沖での水温上昇は世界で過去最大 ~黒潮続流の異常進路が示す未来~
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科地球物理学専攻
兼務 東北大学?海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
准教授 杉本周作(すぎもとしゅうさく)
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 2023年以降、三陸沖の海水温上昇が顕著になり、最近の約一年間は海面水温が平年より約6℃も高い状態にあることを発見しました。これは世界の海の中でも最大の上昇幅です。
- 三陸沖の大幅な水温上昇の主な原因は、黒潮続流(注1)の異常な進路によることを示しました。
- 異常水温上昇は三陸沖気温を大きく上昇させ、その影響は上空2000m付近にまで及ぶことを指摘しました。
【概要】
通常、千葉県から東へ流れ去る海流として知られる「黒潮続流」が、2022年末に北向きの進路を取り始め、2024年春には青森県沖にまで達しました。この異常な流路変更により、豊かな漁場として知られる三陸沖の海洋環境が大きく変化し、地域の気候や水産業への影響が懸念されています。
東北大学大学院理学研究科(東北大学?海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)兼務)の杉本周作准教授らの研究グループは、衛星観測データや気象庁が実施した観測航海データなどを用いた三陸沖の状況の分析によって、2023年以降、三陸沖の海面水温が平年より約6℃高い状態が続いていること、そして、2024年5月には深さ400メートル付近まで水温が10℃以上も高いことを発見しました。また、この異常な水温上昇が、三陸沖の気温を上昇させ、その影響は2,000m上空まで及んでいたことを明らかにしました。
現在、三陸沖の水温上昇は世界の海の中でも最も高い水準にあります。このため、三陸沖の環境を調査することは、世界中の海で起こりうる環境変化を予測し、適切な対策を講じるための非常に重要な手がかりになり得ると考えられます。
本研究成果は、日本海洋学会の英文国際誌Journal of Oceanographyオンライン版にて2月13日に早期公開されました。

図1. 従来の黒潮続流の流路(点線)と、2023年以降の流路(実線)。右側の時系列は、東経144度での黒潮続流の緯度変動を表す。
【用語解説】
注1. 黒潮続流:黒潮は、九州の南から四国沖を経て北上し、房総沖から東に流れる海流。この房総沖以東で列島から遠ざかる強い流れが黒潮続流と呼ばれる。
【論文情報】
タイトル:Influence of Extreme Northward Meandered Kuroshio Extension during 2023-2024 on Ocean-Atmosphere Conditions in the Sanriku offshore region, Japan
著者:Shusaku Sugimoto*, Atsushi Kojima, Tatsuya Sakamoto, Yuma Kawakami, Hideyuki Nakano
*責任著者:東北大学大学院理学研究科 准教授 杉本周作
掲載誌:Journal of Oceanography
DOI:10.1007/s10872-025-00747-x
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻
兼務 東北大学?海洋研究開発機構
変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
准教授 杉本周作(すぎもとしゅうさく)
TEL:022-795-6529
Email:shusaku.sugimoto.d7*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています