2025年 | プレスリリース?研究成果
赤ちゃん星のスピンダウン: 大規模シミュレーションでそのメカニズムを発見 ―太陽の進化解明に期待―
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科天文学専攻
准教授 富田 賢吾(とみだ けんご)
研究者ウェブサイト
【発表のポイント】
- 太陽のような星は誕生後、角運動量を持ったガスを食べながら成長する。すると星の回転はどんどんと高速化しそうだが、実際はそうなっていない。この謎を解決しうる新機構を発見した。
- 本発見は、磁場を通じた原始星と円盤の相互作用を大規模シミュレーションによって高精度で捉えることができるようになったため、可能となった。
- 本発見により星の自転進化に関する理解が進んだため、星の内部構造進化や、原始星近傍の惑星形成への影響を解明することにつながると期待される。
【概要】
大阪大学大学院理学研究科の髙棹真介助教、久留米大学の國友正信講師、東京大学の鈴木建教授、国立天文台の岩﨑一成助教、東北大学大学院理学研究科の富田賢吾准教授らの研究グループは、ガスを食べて成長中の赤ちゃん星、すなわち原始星の大規模シミュレーションを実施することで、原始星がどんどんと回転の勢いを弱めていく新機構(スピンダウン機構)を発見しました。
原始星は回転する原始惑星系円盤のガスを食べることで、回転の勢いを表す「角運動量」を増加させていきます。そのうえ原始星は徐々に半径も縮めていくため、まるでフィギュアスケート選手が腕や脚を縮めて回転の勢いを増していくように、原始星の回転も速くなると予想されます。しかし観測は、予想よりもはるかに遅い自転速度を示唆しています。その理由は、長年の謎となっていました。
本研究グループは、太陽の原始星に注目し、大規模シミュレーションでスピンダウンの仕組みを調査しました。そのような原始星は、強い磁場を持っていると考えられています。本研究グループは、原始星の強い磁場が、原始星から角運動量を引き抜きつつ、円盤の磁場が原始星の食べるガスから角運動量を引き抜く様子を明らかにしました。したがって、この2つの効果が合わさることで原始星がスピンダウンするという可能性が初めて見えてきました。
星の自転は、星の進化や星近くでの惑星形成に影響を与えます。本研究により、今後はこれらについても理解が進むことが期待されます。
本研究成果は、権威ある学術誌であるアストロフィジカルジャーナル(The Astrophysical Journal)に、2025年2月10日に出版されました。

図1 シミュレーションで捉えられた、強い磁場をもつ原始星が円盤ガスと相互作用する様子。(クレジット:髙棹真介)
【論文情報】
タイトル:Spin-down of Solar-mass Protostars in Magnetospheric Accretion Paradigm
著者: Shinsuke Takasao, Masanobu Kunitomo, Takeru K. Suzuki, Kazunari Iwasaki, and Kengo Tomida
掲載誌:The Astrophysical Journal
DOI:10.3847/1538-4357/ada364
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科天文学専攻
准教授 富田 賢吾(とみだ けんご)
Email:tomida*astr.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)