2025年 | プレスリリース?研究成果
高い光安定性を持つDNA製蛍光標識FTOBを開発 神経疾患の原因タンパク質の微細な運動の解析に成功
【本学研究者情報】
〇学際科学フロンティア研究所
准教授 丹羽伸介
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- DNAを活用し、光に強く安定した新しいタンパク質標識「FTOB」を開発しました。
- FTOBを用いてALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因となるタンパク質の動きを詳細かつ高精度に観察することに成功しました。
- 高精度な観察が可能となることで、神経疾患の発症メカニズム解明に大きく貢献することが期待されます。
- FTOBは自由に設計を変更できるため、他の疾患に関連するタンパク質の研究にも応用可能 です。
【概要】
生命科学研究や疾患メカニズムの解明には、タンパク質などの微細な動きをミリ秒単位で観察する高い時間分解能が求められます。既存のタンパク質標識は光安定性や明るさに限界があり、このような観察は困難でした。
東北大学学際科学フロンティア研究所の丹羽伸介准教授と北智輝大学院生を中心とした研究チームは、三重大学大学院工学研究科の鈴木勇輝准教授らと共同で、DNAを利用して作られた新しい蛍光標識「FTOB (Fluorescent-labeled tiny DNA origami block)」を開発しました。このFTOBは、従来の標識に比べて光退色や点滅が起きにくく、ALSなどの神経疾患の原因となるタンパク質の動きをミリ秒単位という極めて高い時間分解能で少なくとも数十分の長時間観察することが可能です。また、FTOBは「DNAオリガミ」という技術を用いてブロックのように自由に組み替えられる設計になっており、細胞分裂のような生命現象や、アルツハイマー病やガンといったさまざまな疾患に関わるタンパク質の研究に幅広く応用できる可能性があります。
本成果は、米国東部時間2025年2月11日に学術誌Cell Reports Physical Scienceにオンラインで掲載されました。

図1. DNAオリガミ製蛍光標識「FTOB」のデザイン。8.8 nm以内に5つの蛍光色素と一つのタンパク質結合サイトを持つ。一つの角には一本鎖DNAを持ち、これが別のFTOBのそれと相補的に結合することで、二量体を形成する。例として、それぞれのFTOBに別々のキネシンを結合し、FTOBをつなぐことで2種類のキネシンを架橋する実験を行った。
【論文情報】
タイトル:Modular photostable fluorescent DNA blocks dissect the effects of
pathogenic mutant kinesin on collective transport
著者:Tomoki Kita1, Ryota Sugie2, Yuki Suzuki2,*, Shinsuke Niwa1,3,*
所属:1東北大学大学院生命科学研究科、2三重大学大学院工学研究科、3東北大学学際科学フロンティア研究所
*共同責任著者:三重大学大学院工学研究科 准教授 鈴木勇輝
*責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 准教授 丹羽伸介
掲載誌:Cell Reports Physical Science
DOI:10.1016/j.xcrp.2025.102440
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
准教授 丹羽伸介
TEL: 022-795-5359
Email: shinsuke.niwa.c8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
特任講師 児山洋平
TEL: 022-795-4353
Email: yohei.koyama.e2*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています