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微小な有機半導体の複雑な分子構造を解明 -次世代電子デバイスと医薬品の開発を加速する革新的技術-

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 講師 黒河博文
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 従来の手法では解析が不可能だった微小結晶の構造解析を可能にする新しい技術を開発しました。
  • 開発した3次元電子回折技術を用いて有機半導体の隠れた構造を解明しました。
  • 本技術は次世代電子デバイス?新薬の開発を加速する技術基盤となります。

【概要】

有機半導体は、次世代の電子デバイスの材料として有望視されています。

東北大学 多元物質科学研究所の黒河博文講師と、理化学研究所 放射光科学研究センターの眞木さおり研究員、高場圭章基礎科学特別研究員(研究当時)、米倉功治グループディレクター(東北大学 多元物質科学研究所 教授)、産業技術総合研究所 電子光基礎技術研究部門の東野寿樹主任研究員、東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻の井上悟助教、長谷川達生教授らの共同研究グループは、有機半導体や薬剤など有機物質の微細構造を同定する革新的な解析法を開発しました。

研究チームは、最先端の3次元電子回折法(注1)と開発した構造決定法を組み合わせて、従来の手法では解析できない複雑な分子構造をもつ有機半導体微小結晶(厚さ数百ナノメートル以下)の構造解析に成功しました。この新しい技術により、有機半導体結晶中で分子がどのように配列しているのか、その複雑な構造の詳細が明らかになりました。さらに、同じ化学構造をもつ分子が結晶内で異なる形状をとる現象を明らかにしました。この新技術を用いて物質構造をより深く理解することで、次世代電子デバイスの主要部品である有機半導体材料の開発のみならず、創薬などさまざまな用途に向けた新物質の探索と構造の最適化を加速させることが期待されます。

本研究成果は、米国化学会Journal of the American Chemical Society オンライン版に、2025年2月6日付で掲載されました。

図1.(左)antiC10の化学構造。(中央)antiC10結晶をクライオ電子顕微鏡観察用のグリッドに載せた写真。(右)antiC10結晶の電子回折像。

【用語解説】

注1. 3次元電子回折法(電子線3次元結晶構造解析法):微小で薄い結晶試料に電子線を照射して、その回折パターンから3次元の立体構造を決定する手法。電子線はX線に比べて数万倍も強く物質と相互作用するため、X線結晶構造解析に適さない微小で薄い単結晶試料を使用できる。電子の散乱特性からは、電荷に関する情報が得られる。Electron 3D crystallography、3D ED、マイクロEDとも呼ばれる。

【論文情報】

タイトル:3D Electron Diffraction Structure of an Organic Semiconductor Reveals Conformational Polymorphism
著者:Hirofumi Kurokawa*, Saori Maki-Yonekura, Kiyofumi Takaba, Toshiki Higashino, Satoru Inoue, Tatsuo Hasegawa and Koji Yonekura*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 講師 黒河博文、
理化学研究所放射光科学研究センター グループディレクター 米倉功治(東北大学多元物質科学研究所 教授)
掲載誌:Journal of the American Chemical Society
DOI:10.1021/jacs.4c12734

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
講師 黒河 博文(くろかわ ひろふみ)
TEL: 022-217-5382
Email: hirofumi.kurokawa.e2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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