2025年 | プレスリリース?研究成果
航空機主翼の空気抵抗と構造重量の両方を低減する設計手法を開発 -様々な次世代型航空機設計への展開に期待-
【本学研究者情報】
〇流体科学研究所 准教授 阿部圭晃
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 航空機の主翼設計において、空気抵抗と構造重量の双方を低減するための最適化フレームワークを構築しました。
- 複合材料を用いた航空機主翼に特有の大きなたわみが設計に及ぼす影響を、初めて詳細に明らかにしました。
- 次世代複合材航空機の開発期間の短縮のみならず、全く新しい形状の航空機(水素?アンモニア推進等)開発への技術展開も期待されます。
【概要】
炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic: CFRP)(注1)は、炭素繊維と樹脂の組み合わせによって様々な強度特性を実現出来る、軽くて強い複合材料です。近年、航空機の材料として広く使われつつあり、従来の金属製航空機では難しい高いアスペクト比(注2)の主翼を採用でき、空気抵抗を下げることが可能となっています。一方、高アスペクト比で細長い主翼は大きくたわむため、通常の線形数値解析を用いた変形予測では、主翼の変形を正確に捉えられませんでした。
東北大学流体科学研究所のLiu Yajun学術研究員、阿部圭晃准教授、大学院工学研究科の伊達周吾氏(当時)、岡部朋永教授らと上智大学理工学部の長嶋利夫教授の研究チームは、複合材主翼の空気抵抗と構造重量の最小化を目的とした多目的最適化フレームワークを構築し、空気抵抗と構造重量をバランスよく低減できる主翼形状を数値的に明らかにしました。さらに既存の線形解析にのみ基づく設計を採用すると、予想よりも大きな力が主翼にかかり、危険な設計となりうることが分かりました。具体的には、最適な主翼形状に対して、大変形状態を正確に予測可能な幾何学的非線形解析(注3)を取り入れることで、通常の線形解析による設計よりも構造重量がわずかながら増加し、主翼の変形も大きくなることを示しました。
今回の研究成果は、2025年1月6日に学術専門誌Journal of Aerospace Science and Technologyに掲載されました。
図1. 複合材航空機主翼の空力構造最適設計
【用語解説】
注1. 炭素繊維強化プラスチック(CFRP):強化材料である炭素繊維と、それを支持する母材樹脂によって構成される複合材料の一種。軽量かつ高剛性?高強度であるという特性を持つ。
注2. アスペクト比:主翼を上から見た形状の縦横比を指す。アスペクト比が高い(高アスペクト比)ほど、細長い主翼となる。
注3. 幾何学的非線形解析:通常の有限要素法と異なり、ひずみの高次項まで考慮した非線形解析により、大きな形状変形を正しく捉えられる解析手法。
【論文情報】
タイトル:E?ects of aeroelastic coupling accuracy and geometrical nonlinearity on performances of optimized composite wings
著者: Yajun Liu, Shugo Date, Toshio Nagashima, Tomonaga Okabe, Yoshiaki Abe*
*責任著者:東北大学流体科学研究所 准教授 阿部 圭晃
掲載誌:Aerospace Science and Technology
DOI:10.1016/j.ast.2024.109926
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学流体科学研究所
准教授 阿部 圭晃
TEL: 022-217-5233
Email: yoshiaki.abe*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学流体科学研究所
広報戦略室
TEL: 022-217-5873
Email: ifs-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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