2025年 | プレスリリース?研究成果
合成技術の「新旧融合」二酸化マンガンを極小ナノ粒子に ~極小ナノ領域のユニークな粒子形態によって次世代蓄電池や触媒が高性能に~
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 教授 本間格
研究室ウェブサイト
〇材料科学高等研究所 所長(金属材料研究所 教授) 折茂慎一
研究室ウェブサイト
〇金属材料研究所 教授 市坪哲
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- アルファ型二酸化マンガンの極小ナノ粒子を短時間で合成する「アルコール溶液法」を開発。
- 極小ナノ粒子化によって粒子のアスペクト比が低下し棒状の結晶が球状の結晶に変化。
- 次世代多価イオン電池の正極や種々の有機化合物を酸化する触媒として高い性能を発揮。
【概要】
北海道大学大学院理学研究院の小林弘明准教授、東北大学多元物質科学研究所博士後期課程の飯村玲於奈氏らの研究グループは、アルファ型二酸化マンガンの極小ナノ粒子材料を開発しました。
二酸化マンガンは乾電池や触媒など長年実用されており、近年では更なる応用として次世代蓄電池への適用や触媒の高活性化に向けた研究開発が進められています。様々な種類がある二酸化マンガンの中で、特にトンネル構造をもつアルファ型二酸化マンガンはマグネシウムやカルシウム、亜鉛など次世代多価イオン電池の正極として有望であることが報告されています。アルファ型二酸化マンガンは長いトンネル構造を骨格とした棒状結晶を形成しますが、多価イオンは固体の中での移動が遅いため、トンネルの長さが短い、すなわち粒子のアスペクト比が小さいほど高い正極特性が期待できます。
今回、従来のアルファ型二酸化マンガン合成技術である「水熱法*1」と、小林准教授らが独自に開発してきた極小ナノ粒子合成技術である「アルコール還元法*2」を融合した「アルコール溶液法」を開発し、粒径10 nm以下のアルファ型二酸化マンガン極小ナノ粒子を短時間で合成することに成功しました。本材料は従来材料で見られた棒状結晶とは異なり、トンネルの長さが短くなり球状に近づいていることが分かりました。実際に粒子のアスペクト比は1/10に低下しており、次世代多価イオン電池の正極として高い特性を示しました。さらに、本材料は種々の有機化合物の酸化反応にも高い触媒活性を示し、触媒反応にも低アスペクト比化が有効であることを見出しました。
本手法は、アルファ型以外の様々な二酸化マンガンの極小ナノ粒子や低アスペクト比材料の合成に展開可能なだけでなく、二酸化マンガンのもつ汎用性から電池や触媒、吸着剤など様々な用途への応用が可能であり、低炭素化社会、地球温暖化対策への貢献が期待されます。なお、本研究成果は、2025年1月16日(木)公開のSmall誌に掲載されました。
開発したアルコール溶液法で合成した 二酸化マンガン極小ナノ粒子
【用語解説】
*1 水熱法 ... 圧力鍋で料理を作るように、水溶液を耐圧容器に入れ100度以上で加熱し材料を合成す
る方法。常温常圧では水に溶けない原料も使用することができ、また常圧では数百度の加熱が必要な
材料も200度以下の温度で合成することができる。
*2 アルコール還元法 ... 金属イオンをエタノールなどのアルコールで還元し、金属や酸化物のナノ粒
子を合成する方法。アルコールは水と比較して酸化物の溶解度が低く、よりサイズの小さいナノ粒子
を得ることが可能である。このことに関するプレスリリースは以下を参照のこと。
?2024年北海道大学プレスリリース(https://www.hokudai.ac.jp/news/2024/08/post-1572.html)
?2023年東北大学プレスリリース(https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/01/press20230130-
01-battery.html)
【論文情報】
タイトル:Ultrasmall α-MnO2 with Low Aspect Ratio: Applications to Electrochemical Multivalent-Ion Intercalation Hosts and Aerobic Oxidation Catalysts
著者: 飯村玲於奈1、7、8、川﨑 栞1、藪 貴2、立花慎之介1、山口和也3、万代俊彦4、木須一彰1、5、北村尚斗6、Zhirong Zhao-Karger7、8、折茂慎一1、井手本康6、松井雅樹2、Maximilian Fichtner7、8、本間 格1、市坪 哲1、小林弘明*、1、2(1東北大学、2北海道大学、3東京大学、4物質?材料研究機構、5芝浦工業大学、6東京理科大学、7カールスルーエ工科大学、8ヘルムホルツ研究所ウルム、*責任著者)
掲載誌:Small
DOI:10.1002/smll.202411493
詳細(プレスリリース本文)※1月21日訂正版へ差替え
※4頁目の論文タイトルを修正しました。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所
教授 本間 格(ほんま いたる)
TEL: 022-217-5815
Email:itaru.homma.e8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学 金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144
Email:press.imr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学 材料科学高等研究所 広報戦略室
TEL:022-217-6146
Email:aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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