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東日本大震災による家屋被害の程度と死亡リスクの関連 ―地域住民コホート調査における宮城?岩手の6万人規模の統合データ解析―

【本学研究者情報】

〇東北メディカル?メガバンク機構 健康行動疫学分野 教授 中谷直樹
東北メディカル?メガバンク機構ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 東北メディカル?メガバンク計画地域住民コホート調査(注1を用いて、東日本大震災による家屋被害の程度と死亡リスクの関連を、宮城県と岩手県の約6万人の対象者に対する平均5年間の追跡により検討しました。
  • 家屋被害の程度と死亡リスクの間に統計学的に有意な関連は示されませんでした。
  • さらなる長期の追跡調査が必要ですが、東日本大震災後の公衆衛生の取り組みが死亡リスクの増加を抑制した可能性があると考えられます。

【概要】

大規模自然災害による家屋の被害は、長期的なストレス反応によって致死的な結果を引き起こす可能性があります。東北大学東北メディカル?メガバンク機構(ToMMo)の中谷 直樹教授、岩手医科大学いわて東北メディカル?メガバンク機構(IMM)の丹野 高三部門長らによる研究グループは、東北メディカル?メガバンク計画地域住民コホート調査において、宮城県と岩手県で収集したデータを用いて、東日本大震災による家屋被害の程度と死亡リスクの関連を平均追跡期間6.5年間のコホート研究により検討しました。

家屋被害の程度のデータには2013年~2016年のベースライン調査(注2における調査票で「被災地に住んでいない」「被害なし」「一部損壊」「半壊」「大規模半壊」「全壊[全流失]」のうち対象者が選択した項目を用いました。死亡データには、対象者の同意に基づき確認できた2021年12月までの1,763例を用いました。

その結果、被害なし群(基準)に比し、被災地に住んでいない者の死亡リスク(95%信頼区間)は0.96(0.82-1.13)、小?中規模被害群(一部損壊、半壊)で0.98(0.87-1.10)、大規模被害群(全壊[全流失]、大規模半壊)で0.98(0.85-1.14)で、家屋被害の程度と死亡リスクの間で統計学的に有意な関連は示されませんでした。本研究の範囲では確定的なことは言えませんが、震災後のさまざまな公衆衛生の取り組みが一定の成果を上げた可能性があります。

この論文は国際学術誌Journal of Epidemiology and Community Health誌に2025年1月15日にオンライン掲載されました。

図1. 東日本大震災による家屋損壊の程度と生存率(Kaplan-Meier曲線)
横軸の観察期間(年)は、個人ごとにベースライン調査実施日(同意日)から最終生存確認日(同意撤回日、異動日、死亡日、最終追跡確認日[2021年1月31日])を差し引いて年単位として算出した。なお、「1 被災地に居住していない」で生存率が低く見えるが、多変量モデルでの解析では有意な結果は示されなかった。

【用語解説】

注1.地域住民コホート調査:2013年から東北メディカル?メガバンク計画により実施されている長期健康調査。東日本大震災の心身への影響を把握?分析し、地域の保健?医療の向上につなげることを目指している。宮城県と岩手県の一般住民約8万人が参加。

注2. ベースライン調査:リクルート時の調査。地域住民コホート調査では、2013年から2016年にかけてベースライン調査を実施した。

【論文情報】

タイトル:Degree of housing damage caused by the Great East Japan Earthquake and all-cause mortality in the community-based cohort study of the Tohoku Medical Megabank Project
著者:Naoki Nakaya*, Kumi Nakaya, Mana Kogure, Yuka Kotozaki, Rieko Hatanaka, Ippei Chiba, Sayuri Tokioka, Masato Takase, Satoshi Nagaie, Hideki Ohmomo, Takahito Nasu, Nobuo Fuse, Kozo Tanno, Atsushi Hozawa
*責任著者:東北大学東北メディカル?メガバンク機構 教授 中谷直樹
掲載誌:Journal of Epidemiology and Community Health
DOI:10.1136/jech-2024-223084

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 東北メディカル?メガバンク機構 健康行動疫学分野
教授 中谷 直樹(なかや なおき)
TEL:022-273-6212
FAX: 022-274-6043
Email:naoki.nakaya.c2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 東北メディカル?メガバンク機構 広報戦略室
TEL:022-717-7908
Email:tommo-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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