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指向性結合が生み出す神経ネットワークの複雑性 ?マイクロ流体デバイスを用いた生体機能の再現と数理モデルの構築?

【本学研究者情報】

〇電気通信研究所 准教授 山本英明
ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 神経細胞をマイクロ流体デバイス(注1上で培養し、回路のつながり方に「向き」を与えることで、生物脳に近い複雑な活動パターンの再現に成功しました。
  • 実験データを基にした数理モデルを構築し、神経回路のつながり方が活動に与える影響を予測可能にしました。
  • 神経科学の基礎研究に加えて、医療や工学などでの広範な応用が期待されます。

【概要】

自然科学の基礎研究は、実験と理論が協力し合いながら発展してきました。例えばニュートン力学では、実験で観測された物体の動きを説明するように、理論や法則が作られ、さらにその正しさを検証するための実験が行われました。同様に、脳神経科学も、生物実験と数理モデルの研究が協調することで、脳の機能やその原理に関する知見をもたらしてきました。しかし、生物の脳は非常に複雑なため、神経細胞ネットワーク(注2に関する数理モデルを生物実験に持ち込んで検証することは、一般的には困難でした。

東北大学電気通信研究所の門間信明大学院生(大学院工学研究科)、山本英明准教授、佐藤茂雄教授らと大学院情報科学研究科の藤原直哉准教授の研究チームは、マイクロ流体デバイスを用いることで、神経細胞の配置やつながり方が人工的に制御された神経ネットワークを実験系で実現しました。そして、スパイキングニューラルネットワーク(注3を使ってこの実験に対応する数理モデルを作成し、神経回路のつながり方が活動の複雑さに与える影響を予測できるようにしました。その結果、生物の脳でも見られるような複雑な発火パターンを形成する上で、神経細胞同士のつながり方が「向き」を持ち、信号が特定の方向に伝わりやすくなることが重要な因子であることを突き止めました(図1)。

本成果は2025年1月4日に科学誌Neural Networks に掲載されました。

図1. 本研究の概観。つながり方が人工的に制御された培養神経回路を数理モデル(スパイキングニューラルネットワークとマルコフ連鎖モデル)に落とし込んでいる。

【用語解説】

注1. マイクロ流体デバイス
マイクロスケールの3次元形状を持つ、微細加工が施されたデバイス。

注2. 神経細胞ネットワーク
脳を構成する神経細胞が神経突起を伸ばし他の細胞とつながることで形成される回路網。神経突起は軸索と樹状突起に分類され、それぞれが出力素子と入力素子を担っている。

注3. スパイキングニューラルネットワーク
神経細胞が発生させるスパイク信号をシミュレーションすることができる生物学的妥当性が高いモデル。

【論文情報】

タイトル:Directional intermodular coupling enriches functional complexity in biological neuronal networks
著者: Nobuaki Monma, Hideaki Yamamoto*, Naoya Fujiwara, Hakuba Murota, Satoshi Moriya, Ayumi Hirano-Iwata, and Shigeo Sato
*責任著者:東北大学電気通信研究所 准教授 山本英明
掲載誌: Neural Networks
DOI:10.1016/j.neunet.2024.106967

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学電気通信研究所
(兼)東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
(兼)東北大学大学院工学研究科
准教授 山本英明
TEL: 022-217-6102
Email: hideaki.yamamoto.e3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学電気通信研究所
総務係
TEL: 022-217-5420
Email: riec-somu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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