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津波が港湾ネットワークにもたらす影響を評価する手法を開発 ―マニラ海溝津波が発生すれば東日本大震災時より経済損失が大きい可能性―

【本学研究者情報】

〇災害科学国際研究所 准教授 サッパシー アナワット
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 津波が世界の港湾ネットワークに与える影響を、地球温暖化による海面上昇も考慮して包括的にリスク評価する手法を新たに開発しました。
  • マニラ海溝での巨大地震?津波シナリオを用いて分析したところ、現在の海面水位では最大11港湾が被害を受ける一方で、地球温暖化による将来の海面上昇時には最大15港湾が被害を受ける可能性が示されました。
  • 「媒介中心性変化率」(注)により、津波で影響を受けにくい港湾の機能を評価し、代替港湾を示すことも可能にしました。

【概要】

津波は港湾や港湾ネットワークに打撃を与え、世界的な経済損失をもたらすことがあります。しかし、これまでそのリスク評価は十分になされていませんでした。

東北大学災害科学国際研究所のチュア コンスタンス特任研究員をはじめとする研究チームは、世界の港湾ネットワークの位相、港湾同士の接続性、地球温暖化による海面上昇等を考慮して、津波が港湾および世界の港湾ネットワークにもたらすリスクを包括的に評価する手法を開発しました。マニラ海溝で巨大地震?津波が発生するシナリオを用いて分析した結果、現在の海面水位では最大で11港湾が被害を受ける一方で、2100年には気候変動がもたらす海面上昇により最大で15港湾が被災する可能性が示されました。東日本大震災時より経済損失が大きくなる可能性もあります。さらに、新たな指標「媒介中心性変化率」を導入し、津波で影響を受けにくい港湾の機能を評価して代替港湾を示すことも可能にしました。本手法は、津波のリスク把握や事業継続計画(BCP)に活用可能です。

本研究成果は、2024年12月4日、npj Natural Hazardsに掲載されました。


a. コンテナサービスの港湾ネットワーク(上図)。
b. 現在の海面水位で被災することが推定される港湾 (n = 11) (下左図)
c. 2100年までの海面上昇シナリオで被災が推定される港湾 (n = 15)。(下右図)
※媒介中心性変化率が0より大きい場合(オレンジ色の点)は、対象港湾が他の港湾間の「最短経路」に位置する頻度が増加し、代替の中継港として機能することを示す。媒介中心性変化率が0より小さい場合(青色の点)は、対象港湾が他の港湾間の「最短経路」に位置する頻度が減少し、予定されていた船舶が寄港せず、他の港湾へ転換されることを示す。

【用語解説】

(注)「媒介中心性変化率」:「媒介中心性」とは、対象となる結節点(港湾)がそれとは別の2つの結節点(港湾)間の最短経路上にある回数の指標で、対象の港湾が港湾ネットワーク全体においてどのくらい重要であるかどうかを示す。「媒介中心性変化率」とは、津波の前後で港湾の媒介中心性がどのくらい変化したかを示す。

【論文情報】

タイトル:An approach to assessing tsunami risk to the global port network under rising sea levels
著者:
Constance Ting Chua, Takuro Otake, Tanghua Li, An-Chi Cheng, Qiang Qiu, Linlin Li, Anawat Suppasri*, Fumihiko Imamura & Adam D. Switzer
*責任著者:
東北大学災害科学国際研究所 チュア コンスタンス特任研究員(津波工学)
Suppasri, Fumihiko Imamura & Adam D. Switzer
掲載誌:npj Natural Hazards volume 1, Article number: 38 (2024)
DOI:10.1038/s44304-024-00039-2

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究内容に関すること)
東北大学災害科学国際研究所
准教授 サッパシー アナワット
TEL:  022-752-2090
Email: suppasri.anawat.d5*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学災害科学国際研究所 広報室
TEL:  022-752-2049
Email: irides-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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