2024年 | プレスリリース?研究成果
磁性と強誘電性を併せ持つマルチフェロイクス動作温度を室温から160℃まで上昇させることに成功 ─電気?磁気?光を相互に操る次世代の新機能デバイス実現に期待─
【本学研究者情報】
〇金属材料研究所 教授 小野瀬佳文
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 電気的な性質と磁気的な性質が強く結合した物質であるマルチフェロイクス(注1)を室温よりもはるかに高い約160℃という温度で実現しました。
- マルチフェロイクスには、エネルギーロスの少ない磁性の制御や光の一方向性といった機能があることから、マルチフェロイクスの動作温度の高温化により今後応用への展開が期待されます。
【概要】
物質には電気的な性質である誘電性と磁気的な性質である磁性があります。マルチフェロイクスと呼ばれる物質群では、電気的に磁性を制御もしくは磁気的に電気分極(注2)を制御するといった電気磁気効果が観測されています。またマルチフェロイクスで光の進む方向が逆になると透過量が変わるマジックミラーのような機能(光の一方向性(注3))も観測されています。このような機能を、高機能な光デバイスや省電力の磁気メモリ制御などへ応用するための一つの障害がその動作温度の低さでした。これまで室温以下においてのみマルチフェロイクスの動作が確認されており、実用化のためにはより高温における動作が必須の課題となっていました。
東北大学大学院理学研究科の田島史門大学院生、同大学金属材料研究所の増田英俊助教、新居陽一准教授、木村尚次郎准教授、小野瀬佳文教授の研究グループは、マルチフェロイクスを室温以下だった既存の動作温度に比べてきわめて高い温度(約160℃)で動作させることに成功しました。
本成果は、これまでマルチフェロイクスのデバイス応用を阻んできた「動作温度が低い」という問題を解決し、実用化への道を示したものと言えます。
本研究成果は2024年12月18日(現地時間)に、材料科学分野の専門誌Communications Materialsに掲載されました。
図1. 高温マルチフェロイクス物質Tb2(MoO4)3。
【用語解説】
注1. マルチフェロイクス
強誘電体の大きな電気分極(注2)が磁性と共存し強く結合している性質もしくは物質。マルチフェロイクス物質では、磁場誘起の電気分極反転など大きな電気磁気効果が起こる。
注2. 電気分極
物質中の電気双極子の密度を表す物理量。
注3. 光の一方向性
光の伝わり方が、右から伝わる場合と左から伝わる場合とで異なる性質。電流の流れやすさが左右で異なるダイオードは一般的に知られているが、マルチフェロイクスでは光でも同じ効果が現われる。光は電磁波の一種であり、マルチフェロイクスでは光の電気と磁気が結合することで一方向性が生じる。
【論文情報】
タイトル:A high-temperature multiferroic Tb2(MoO4)3
著者: Shimon Tajima*, Hidetoshi Masuda, Yoichi Nii, Shojiro Kimura, Yoshinori Onose
*責任著者:東北大学大学院理学研究科 大学院生 田島史門
掲載誌:Communications Materials
DOI:10.1038/s43246-024-00717-8
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所
教授 小野瀬 佳文
TEL: 022-215-2040
Email: onose*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所
情報企画室広報班
TEL: 022-215-2144
Email: press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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