2024年 | プレスリリース?研究成果
東海地方に豪雨と猛暑をもたらしたのは「黒潮の大蛇行」の影響と解明 ~黒潮が及ぼす影響を高解像度の気候シミュレーションで分析~
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科地球物理学専攻
兼務 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
准教授 杉本周作(すぎもとしゅうさく)
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 黒潮大蛇行(注1)により東海地方の夏季降水量が増加することを発見し、それが、台風や2020年豪雨などの降水量にも影響を与えていたことを明らかにしました。
- 東海地方の降水量増加は、黒潮大蛇行に伴う水蒸気の増加によって大気が不安定化したことが要因であると指摘しました。
- 黒潮大蛇行で増加した水蒸気が、東海地方に猛暑をもたらしたと言えます。
- 黒潮が社会生活に及ぼす影響を明確にしたものであり、防災?減災への貢献が期待される重要な成果です。
【概要】
黒潮大蛇行が7年以上も続くなど、近年、日本周辺の海は大きく変わりつつあります。海の変化が私たちの暮らしに与える影響が懸念されています。
東北大学大学院理学研究科、東北大学?海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)兼務の杉本周作准教授は、高解像度の気候シミュレーション(注2)を行い、黒潮大蛇行が日本の夏季気候に与える影響を詳細に分析しました。その結果、黒潮が大蛇行している時期には、海から東海地方へ大量の水蒸気が供給されることにより、温室効果で夏が一層暑くなることに加え、大気が不安定になり、降水量が増加することが明らかになりました。
この成果は、近年東海地方を襲った豪雨の一因が黒潮大蛇行にあることを初めて示したものです。地球温暖化による大気中の水蒸気増加が報告される中、黒潮大蛇行が続くことで、今後も東海地方の太平洋側において豪雨災害のリスクが高まることが懸念されます。本研究は、防災?減災の取り組みに新たな知見を提供し、気象災害への対策に貢献する重要な成果です。
本研究成果は、日本海洋学会の英文国際誌Journal of Oceanographyオンライン版にて12月22日(日本時間)に早期公開されました。
図1. 黒潮が大蛇行していた2021年7月1日の海面水温の平年差。青矢印は黒潮の流路を表す。
【用語解説】
注1. 黒潮大蛇行:黒潮は、九州の南から四国の沖合まで北上して最後は房総沖から東に流れて列島から遠ざかる海流。ほぼ列島に沿って流れる「直進型」と、紀伊半島沖でいったん大きく沖に出て房総半島の近くに戻ってくる「蛇行型」がある。気象庁は、蛇行型のうちでも沖へ出ていく幅が北緯32度より南まで蛇行した場合を「大蛇行」と呼んでいる。
注2. 気候シミュレーション:東北大学サイバーサイエンスセンターのスーパーコンピューター上で、気象庁非静力学大気モデルを用いて気候シミュレーションを行った。本研究では黒潮大蛇行に伴う水温上昇がある海とそうではない海を用意し、計算された大気場を比較した。なお、気候シミュレーションは海洋変化の影響を十分に表現できるように5 kmの高解像度で実施している。
【論文情報】
タイトル:Marine Heatwave off Tokai, Japan, attributed to the Kuroshio Large Meander Path, and an associated increase in summer rainfall over Japan
著者:Shusaku Sugimoto*
*責任著者:東北大学大学院理学研究科 准教授 杉本周作
掲載誌:Journal of Oceanography
DOI:10.1007/s10872-024-00741-9
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻
兼務 東北大学?海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
准教授 杉本周作(すぎもとしゅうさく)
TEL:022-795-6529
Email:shusaku.sugimoto.d7*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています