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電流の44%をCO2からメタノールの生成に利用できる高効率触媒を開発 ─カーボンニュートラルへの貢献に期待─

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 教授 根岸雄一
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 欠陥を導入することで特有の活性を持つ金属微粒子(金属ナノクラスター)(注1)の精密合成に成功しました。
  • 本手法により得られた新規金属ナノクラスターは、電気化学的二酸化炭素(CO2)還元(注2)触媒として、高選択率(注3)でのメタノール合成を可能にしました。
  • こうした原子レベルでの構造制御により、高活性触媒の開発が促進されるとともに、脱炭素社会の実現がまた一歩近づくことが期待されます。

【概要】

脱炭素社会実現に向けて、二酸化炭素(CO2)を有用な有機化合物に変換できるCO2還元触媒の開発は非常に重要です。この反応により得られる有機化合物の中でも、メタノールはその需要や付加価値の高さから特に注目されています。

東北大学多元物質科学研究所の根岸雄一 教授、東京理科大学の川脇徳久 講師、Sourav Biswas助教、田中智也 氏(2023年度修士課程修了)、新行内大和 氏(修士課程2年)、神山真帆 氏(学部4年)、米バンダービルト(Vanderbilt)大学のDe-en Jiang教授らの研究グループは、原子レベルでの構造制御により、高選択率でメタノールを製造する触媒の創製に成功しました。欠陥を導入しない場合では全くメタノールは生成しません。欠陥導入によってファラデー効率(注4)が約44%という、高いメタノール生成選択率を達成しました。原子レベルでの構造設計により、メタノール合成触媒の更なる高活性化が可能になり、今後、脱炭素社会の実現がさらに一歩近づくと期待されます。

本研究成果は、2024年11月28日付けで、ナノサイエンスとナノテクノロジーの専門誌Small Scienceに掲載されました。

図1. (a) Cu58 NC ([Cu58H20(SPr)36(PPh3)8]2+) および (b) Cu58-I NC ([Cu58H20(SPr)36(PPh3)7]2+)の幾何構造と配位子シェルの歪み(CとHは省略)

【用語解説】

注1.金属ナノクラスター(NC):数個から数百個の金属原子で構成される微粒子。

注2.電気化学的二酸化炭素還元:電気分解反応によってCO2(二酸化炭素)を分解し、酸化物から酸素を減らすことで、有用な物質へと変換する反応。

注3.選択率:生成物の中から、目的物が得られた割合。電気化学反応におけるファラデー効率。

注4.ファラデー効率:加えた電流が、目的の生成物を作るために実際に使われた割合。メタノール合成に使われなかった残りの電流は、主に水溶液中のプロトンを水素に変換したり、COを生成するのに消費されていると思われます。

【論文情報】

タイトル:Highly Selective Methanol Synthesis Using Electrochemical CO2 Reduction with Defect-Engineered Cu58 Nanoclusters
著者:Sourav Biswas1、田中智也2、Haohong Song3、尾上雅季2、新行内大和2、 Sakiat Hossian1、神山真帆4、幸坂大河2、中谷利毅2、新堀佳紀1、Saikat Das 1、川脇徳久4,5*、De-en Jiang6、根岸雄一4,7
(1. 東京理科大学研究推進機構総合研究院、2.東京理科大学大学院理学研究科、3. Interdisciplinary Materials Science, Vanderbilt University、4. 東京理科大学理学部第一部応用化学科、5.東京理科大学研究推進機構総合研究院カーボンバリュー拠点、6. Department of Chemical and Biomolecular Engineering, Vanderbilt University、7. 東北大学多元物質科学研究所)
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 根岸雄一
Department of Chemical and Biomolecular Engineering, Vanderbilt University 教授 De-en Jiang
東京理科大学理学部第一部応用化学科 講師 川脇徳久
掲載誌:Small Science
DOI:10.1002/smsc.202400465

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 根岸 雄一
Email: yuichi.negishi.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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