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日本の医学界は 「スペイン風邪」にどのように対応したか ―医学?歴史学連携で大正時代の医学雑誌『日本之医界』を読み解くー

【本学研究者情報】

〇災害科学国際研究所 准教授 川内淳史
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 全世界で数千万人の死者を出した「スペイン風邪」(1918~20年)の時期に発行された医療業界誌『日本之医界』(東北大学附属図書館医学分館蔵)を分析し、当時の日本の医学界は国内感染爆発に至るまでスペイン風邪に関心を持っていなかった可能性を明らかにしました。
  • 『日本之医界』は、北里研究所が提示したスペイン風邪の病原体がインフルエンザ菌である説を支持しました。当時、北里研究所と東京帝国大学?国立伝染病研究所の政治的対立があり、各自が属する学派が、どの病原体説を支持するかに影響していたと考えられます。
  • 本研究は2020年以来、東北大学災害科学国際研究所内で開催してきた「"スペイン風邪"文理連携勉強会」メンバーが実施し、医学と歴史学の連携による「総合知」の研究成果です。

【概要】

1918年3月以降スペイン風邪が世界的に流行し、日本でも都市部や軍隊の駐屯地を中心に感染が広がっていきました。この時期に発行された医療業界誌『日本之医界』を分析した結果、スペイン風邪流行に関する記事が掲載されたのは、日本国内で感染爆発が起きた1918年の秋以降であったことが明らかになり、日本の医学界が流行初期段階でスペイン風邪に関心を寄せていなかった可能性が示唆されました。また『日本之医界』は、スペイン風邪の病原体として、北里研究所が提示したインフルエンザ菌説を支持しました。これには、当時の日本の医学界における、北里研究所と東京帝国大学?国立伝染病研究所の政治的対立や『日本之医界』の属する学派などが影響していたと考えられます。

本研究成果は2024年12月1日、Journal of Disaster 虎扑电竞に掲載されました。

図1. スペイン風邪第1波の流行と『日本之医界』に掲載された関連記事数

【論文情報】

タイトル:Analyzing trends in the medical community during the Spanish flu pandemic in Japan with the comprehensive knowledge of humanities and sciences: A case study of the medical journal, The Japan Medical World
著者:Atsushi Kawauchi*, Natsuko Chubachi, Yasuhiro Miki, Kiyoshi Ito, and Eiichi N. Kodama
*責任著者:東北大学災害科学国際研究所 准教授 川内淳史
掲載誌:Journal of Disaster 虎扑电竞 vol.19 no.6, pp. 921-934
DOI:10.20965/jdr.2024.p0921

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学災害科学国際研究所
准教授 川内淳史
Email: atsushi.kawauchi.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学災害科学国際研究所 広報室
TEL: 022-752-2049
Email: irides-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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