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がん細胞の染色体不安定性の一因を解明 がん細胞の動原体では繊維状コロナが減少している

【本学研究者情報】

〇加齢医学研究所 分子腫瘍学研究分野教授 田中耕三
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 正常な細胞分裂では、染色体上の動原体(1)と呼ばれる構造が、紡錘体(注2)を形成する微小管(注3)と結合して紡錘体極へと引っ張られます。その際、微小管と結合していない動原体の最外層に線維状コロナ(注4)が形成されます。
  • がん細胞では、細胞分裂期に染色体上の動原体の最外層に存在する繊維状コロナが、正常細胞と比較して減少していることがわかりました。
  • 繊維状コロナの減少により、がん細胞では動原体での微小管の形成が抑制されており、これが染色体不安定性(細胞分裂の際に染色体の分配異常が増加している状態)の一因となっていると考えられます。
  • 染色体不安定性は、がんの悪性化や薬剤耐性の原因であり、本研究成果は、がん細胞における染色体不安定性の発生機構の理解につながります。

【概要】

多くのがん細胞では、染色体不安定性(細胞分裂の際に染色体の分配異常が増加している状態)が存在しており、がんの悪性化や薬剤耐性の原因になっています。しかし、その原因はよくわかっていません。

東北大学加齢医学研究所?分子腫瘍学研究分野の家村顕自助教、田中耕三教授らの研究グループは、がん細胞では、細胞が分裂する際に、染色体上の動原体の最外層に形成される繊維状コロナと呼ばれる構造が減少していることを明らかにしました。繊維状コロナの減少により、がん細胞では、正常な染色体分配に寄与する動原体での微小管の形成が抑制されていました。このことは、繊維状コロナの減少が、がん細胞の染色体不安定性の一因である可能性を示唆しています。

本研究成果は、11月28日に学術誌Cancer Science誌で発表されました。

図1. 細胞分裂の際に染色体が分配されるしくみ
染色体上の動原体が、紡錘体の微小管と結合して紡錘体極に引っ張られることによって染色体が分配される。

【用語解説】

注1.動原体:染色体上のセントロメア領域に形成される巨大なタンパク質複合体で、細胞分裂の際に微小管が結合する部位となる。

注2.紡錘体:細胞分裂の際に微小管により形成される紡錘型の構造体であり、紡錘体の中央に整列した染色体を微小管によって両極に引っ張って分配するはたらきを持つ。

注3.微小管:細胞骨格の一つで、チューブリンというタンパク質が重合して形成される管状の構造物。伸長と短縮を繰り返すことにより、細胞の運動や染色体分配を司る。

注4.繊維状コロナ:細胞が分裂する過程の初期に、紡錘体の微小管と結合していない動原体の最外層に形成されるシート状の構造物で、動原体が微小管と結合すると消失する。

【論文情報】

タイトル:Fibrous corona is reduced in cancer cell lines that attenuates microtubule nucleation from kinetochores
著者:石川祐大、福江裕孝、岩上瑠奈、池田真教、家村顕自、田中耕三 
*責任著者:家村顕自、田中耕三
掲載誌:Cancer Science
DOI:10.1111/cas.16406

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学加齢医学研究所 
教授 田中 耕三
TEL: 022-717-8491
Email: kozo.tanaka.d2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学加齢医学研究所 広報情報室
TEL: 022-717-8443
Email: ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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