宮下 宗一郎 青森県知事(東北大学法学部 2003年卒)
学生広報スタッフの山口が、同じ高校、大学出身である青森県の宮下 宗一郎 知事(2003年法学部卒)にインタビューしました。東北大学進学後、上京し、のちに地元である青森県むつ市の市長としてUターンし、官僚から政治家の道へ進んだ宮下知事に、大学時代からキャリアに至るまでに経験したことや感じたこと、そして進路に迷う学生へのアドバイスを伺いました。
研一と共に青森ポーズ
知事プロフィール
青森県知事 宮下 宗一郎 氏
青森県立青森高等学校から東北大学法学部に進学。
大学卒業後、国土交通省へ入省。
その後、外務省へ出向し、在ニューヨーク日本国総領事館で2年勤める。
2014年、むつ市長に就任。
2023年から青森県知事。
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大学時代のゆとりと責任
なぜ東北大学の法学部を選んで進学され、どのような学生時代を過ごされましたか。
法学部を選んだのは法律や政治を勉強して世の中の役に立てるような人になりたいという思いがあったからです。大学生の時は自由な時間がたくさんあったので、アルバイトやクラブ活動以外にも麻雀をしたり???。一見、無駄に過ごしていたような感じがしますが、そのゆとりのようなものが今の自分を作ってくれている気がします。いろいろなことを考える時間もあったし、図書館に行き新聞をたくさん読んだり、片っ端から良さそうな本を読んでました。
自由な時間を過ごしていたようですが、当時を振り返ってもっとしておけばよかったなと思うことはありますか。
時間は自分のものではなく、人のためにあるという責任感を学生の頃から持つべきだったと思います。今は人のための時間だと思って仕事をしているから、家に帰った後も、寝る時間と自分の時間を決めて過ごしています。大学生の時は時間が増えたことで自分の時間だと思ってしまいましたが。大学は基礎的な教養も専門性も高める絶好の機会だから、単位を取らなくても面白い先生の話を聞きに行くなど自分から獲得する学びをもっと多様な形で実現することをおすすめします。
大学時代の教授や友人で印象に残っている人はいますか。
大学の時に友達だった人は本当に一生の仲間です。弁護士になった人もいるし、大企業に就職した人もいるし、私の妻も同級生だし、みんな本当に尊敬できる友達ばかりだったので、そこが東北大学の素晴らしいところだと思います。
地域社会に貢献するため選んだ進路
国土交通省を目指そうと決めたタイミングはいつ頃でしたか。
大学3年生くらいになると皆就職の話をし始めました。法学部は法曹か民間か公務員になるか、という主に3つの進路があります。私はむつ市で育った自分の生い立ちを振り返って、どう貢献出来るかなと考えた時、公務員になって地元を含めて「日本の地域社会に貢献したい」と考えるようになりました。実際に、大規模小売店舗法みたいな国の制度で地域の商店街が廃れるのを目の当たりにしました。そこで、国の制度で一気に地域が廃れるようなことがあってはならない、地域の声を国の制度に反映させた方が良いと思ったんです。だから公務員、とくに国家公務員でなければいけなかったんです。公務員試験は、ご飯と寝る以外の時間は勉強して受かりました。
感じた限界と螺旋的発展
国交省の後は外務省へ出向し在ニューヨーク日本国総領事館へ赴任されています。どのような思いでしたか。
都市のまちづくりの分野で、日本の中だけで仕事をすることには限界を感じていたので、自分から希望して向かいました。大きく物事を捉えるためには1つ壁を乗り越えて海外で仕事して生活するということが大事だとずっと思っています。
先ほどは「日本の中だけで仕事をするのに限界を感じて外務省へ出向された」と伺いましたが、その後、地元に戻りむつ市長になられました。なぜでしょうか。
ニューヨークで日本のことをやるのと、むつ市で世界のことをやるのは一緒だと私は思っています。ニューヨークもむつも同じ世界の一部なので、むつ市で世界を変えるような新しい価値観を作ることができれば、ニューヨークで外交や日本人と企業を支援することと同じことだと思います。青森から仙台に進学して、東京に出て、また青森に戻って来たのを、上から見ると一周したように思えますが、横から見ると成長しながら上に登っています。そんな螺旋的な発展をしているという感覚を学生の皆さんにも持ってほしいと思います。地元を大切にできない人間が世界を変えることは多分できないと私は思います。自分の地元に帰ってほしいとかそういう意味では無いですが。生きていくうえでは根っこが大事ですから。
自分は作っていくもの
これまでの進路の決断をしていく中で大切にしていることと、進路に迷う学生へのアドバイスをお願いします。
「決めたら迷わないこと」が大事だと思います。その中で自分探しが必要とよくいうけれど、「自分」というのは、作っていくしかないものだと考えています。だから行き先を決める時に大事なのは、どう自分自身を振り返るかということです。何をしてきて、何を大切にしてきて、何に大切にされたかってことを改めて考えてみる。周りの他の人によって自分が作られたわけだから、親や友達に相談しながらやるということも大事です。そうして自分が何をしてきたかを考えることで、その先どんな道に進むかがとてもクリアに見えてくる瞬間が必ずあると思います。振り返ってもそれがわからないなら、大学生のうちに本をたくさん読んで、人とたくさん会って、たくさん旅をして経験を積んで人生の転換点を迎えられるようにすれば答えに近づいていくと思います。
文:学生広報スタッフ 山口 璃空
写真:東北大学総務企画部広報室
協力:青森県
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