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白亜紀前期に起きた地球史上最大規模の火山噴火が111.6万年間におよぶ海洋の無酸素化と海洋生物の大量絶滅を引き起こした

【本学研究者情報】

〇総合学術博物館
教授 髙嶋 礼詩(たかしま れいし)
博物館ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 白亜紀前期の海洋生物の大量絶滅を引き起こした大事変の詳細な年代(1億1955万年前に発生し、6万年間続いた)を初めて明らかにしました。
  • 白亜紀最大の火山体「オントンジャワ海台」の噴火が、世界中の海洋を「ヘドロの海」へと変貌させ、大事変を引き起こしたことを証明しました。
  • 地球温暖化の進行がもたらす気候?環境変動と生態系への影響を評価するうえでも有益な研究成果です。

【概要】

白亜紀前期、地球規模の急激な温暖化の進行と海洋における無酸素水塊の拡大により、海洋生物の多くが絶滅しました。海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Event 1a以下、OAE1a)(注1と呼ばれるこの大事変についてはヨーロッパや大西洋周辺地域の地層で盛んに研究されてきました。しかし、OAE1aが生起し持続した正確な年代は不明でした。

東北大学総合学術博物館の髙嶋礼詩教授、米国ウィスコンシン大学のBradley S. Singer教授らの研究グループは、OAE1aの詳細な年代を明らかにしました。研究グループは、北海道芦別市の芦別岳北西に露出する地層(蝦夷層群、図1、2)からOAE1a時期に堆積した地層を見出し、そこに数多くの火山灰層が挟まることを発見しました。これらの火山灰層からジルコン(注2)を抽出し、U-Pb放射年代測定法(注3)で年代を測定した結果、OAE1aは1億1955万年前に発生し、その後111.6万年間、海洋の広い範囲で無酸素環境が持続したことが判明しました(図3、4)。また、蝦夷層群のOAE1aの地層の最上部から、年代の対比に有効な示準化石である浮遊性有孔虫化石を発見しました(図5)。この化石種は、白亜紀最大の海底火山体である「オントンジャワ海台」の上に重なる石灰岩からも報告されていることから、オントンジャワ海台の噴火とOAE1aの発生がほぼ同時であることが明らかになりました。今回、年代測定と同時に行った蝦夷層群のオスミウム同位体比(注4)の検討からも、OAE1aの開始時に大規模な火成活動の影響が示唆されることから、オントンジャワ海台の噴火がOAE1aを引き起こしたことが実証されました。

本成果は2024年11月21日日本時間4時に、学術誌Science Advancesに掲載されました。

図1. 白亜紀の古地理図と検討した地層(蝦夷層群)と巨大火山体オントンジャワ海台の位置。

【用語解説】

注1. 海洋無酸素事変OAE1a:白亜紀(1億4500万年前~6600万年前)の中ごろには、海洋において酸素に枯渇した水塊が広域に発達した現象が何度か発生したことが知られており、海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Events略してOAE)と呼ばれている。白亜紀には規模の違いがあるものの、およそ8回程度の海洋無酸素事変(Faraoni OAE、 OAE1a、 Fallot OAE、 OAE1b、 OAE1c、 OAE1d、 OAE2、 OAE3など)が起こったが、無酸素水塊の発達範囲に関しては、本研究対象である「OAE1a」と9400万年前の「OAE2」が最大規模とされている。大規模な火山活動によって、急激な温暖化と湿潤化が生じ、大量の栄養塩が大陸から海洋にもたらされた。これにより、海洋の富栄養化と一次生産の増加に起因して無酸素水塊が拡大したと考えられている。

注2. ジルコン:ZrSiO4で表されるケイ酸塩鉱物。ウラン、トリウムを豊富に含み、鉛に乏しいため、U-Pb放射年代測定の対象となる鉱物。

注3. U-Pb放射年代測定法:ウラン?鉛放射年代。放射性物質であるウラン(U)の原子核が崩壊し,最終的に鉛(Pb)の原子核に変化することを利用して,年代を測定する方法。

注4. オスミウム同位体比:マントル由来の火噴出物が海底での火山噴火によって大量に放出されると、全海洋の海水のオスミウム同位体比(188Os/187Os)が大きく減少する。このような変動は地層の中にも記録され、過去の火山活動の変化を復元することが可能である。OAE1a層の最下部は、オスミウム同位体比の急激な減少によって特徴づけられることから、大規模な火山活動の存在が示唆される。

*図2~5については、下記のプレスリリース本文をご覧ください。

【論文情報】

タイトル:Radioisotopic chronology of ocean anoxic event 1a: Framework for analysis of driving mechanisms
著者:Youjuan Li, Brad S. Singer, Reishi Takashima**, Mark D. Schmitz, Luca Podrecca, Bradley B. Sageman, David Selby, Toshiro Yamanaka, Michael T. Mohr, Keiichi Hayashi, Taiga Tomaru, Katarina Savatic
**国内責任著者:東北大学総合学術博物館 教授 髙嶋礼詩
掲載誌:Science Advances
DOI:10.1126/sciadv.adn8365

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学総合学術博物館
http://www.museum.tohoku.ac.jp/
教授 髙嶋 礼詩(たかしま れいし)
電話:022-795-6620
Email:reishi.takashima.a7*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL: 022-795-6708
Email: sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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