2024年 | プレスリリース?研究成果
微細粉末を作るボールミルの最適条件を計算科学でシミュレーション ─粉砕装置の設計をより簡単に─
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 助教 久志本築
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 微細な粉末を作る粉砕装置の一種である湿式ボールミル(注1)について、その内部で粉砕媒体として機能するボールの運動を解析することで、装置設計に必要な情報を一度に抽出できることがわかりました。
- 従来は試行錯誤的に設計されてきた湿式ボールミルですが、計算科学に基づく装置設計を実現できる可能性があることがわかりました。
- 本研究成果から、湿式ボールミルの設計における実験工数の削減が見込まれるだけでなく、実際の装置が手元になくても装置設計が可能になるため、湿式ボールミルの改造や大型化などへの応用も期待されます。
【概要】
湿式ボールミルは、セラミックス、食品、電子部品の原料となる微細な粉末を作る代表的な粉砕装置です。しかし、粉砕結果の予測方法が確立されていないため、装置設計に多大なコストを要するだけでなく、粉砕装置の改造や大型化など手元に装置がない場合の装置設計が難しいことが課題でした。
東北大学多元物質科学研究所の久志本築 助教らの研究グループは、離散要素法(DEM) (注2)と呼ばれる計算手法を用い、湿式ボールミル中のボールの運動を計算することで、装置設計に必要な情報を予測できる可能性があることを明らかにしました。これにより、経験と勘に頼らない湿式ボールミルの装置設計の実現が期待されます。
本成果は10月22日、粉体および粒子状物質に関する分野の専門誌Advanced Powder Technologyに掲載されました。
図1. 湿式ボールミルの概念図
【用語解説】
注1. 湿式ボールミル:粉砕方法の一種です。粉砕容器中に液体、粉砕したい粉末(砕料粒子)と硬いステンレススチールやセラミックスのボールを入れて撹拌し、ボール同士を衝突させることで砕料粒子を粉砕します。
注2. DEM:離散要素法(Discrete Element Method)の略称です。DEMは、固体状の要素個々に作用する力をモデル化し運動方程式を立て、その方程式を逐次的に解き要素個々の運動を追跡することで、要素群全体の挙動を表現し解析する方法です。今回扱ったボールの運動だけでなく、粒子の集合体である粉体挙動など、不連続な運動や現象の表現を得意としています。
【論文情報】
タイトル:Development of design method for wet stirred ball milling by simulation using DEM
著者: Kizuku Kushimoto*, Akira Kondo, Takahiro Kozawa, Makio Naito, Junya Kano
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 助教 久志本築
掲載誌:Advanced Powder Technology
DOI:10.1016/j.apt.2024.104689
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
助教 久志本 築(くしもと きずく)
TEL:022-217-5136
Email: kizuku.kushimto.d2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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