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生物規範型制御方式から首長竜の遊泳様式を復元 古生物の新たな運動復元手法として期待

【本学研究者情報】

〇電気通信研究所 助教 福原洸
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 中生代に生息していた首長竜はほぼ同じ大きさのヒレに変化した四肢を持っていましたが、それらをどのように動かして泳いでいたのかは今も論争が続く古生物学上の大きな問題の一つです。
  • 首長竜の遊泳様式を復元(注1)するために、現生の四足動物を参考にして四肢のヒレを協調させる生物規範型自律分散制御則(注2)を構築し、首長竜型ロボットに実装して生成される運動様式を調べました。
  • ヒレの羽ばたき周期や前後ヒレの間隔に応じて、前ヒレの羽ばたきが生み出した渦列(注3)を活用するタイミングで後ろヒレの羽ばたき方を柔軟に変化させてことで効果的な推進力を生み出す様子が観察されました。

【概要】

絶滅した古生物の動きの復元では、類似した形態を持つ現生種を手がかりに類推するという手法が広く用いられています。現生種に見られない特異な形態を持つ古生物の場合、この手法を用いることはできないため、それらの動きの復元は非常に困難でした。このため、フタダバスズキリュウなどの首長竜が四肢にある翼のような大きなヒレをどのように動かして泳いでいたのかは、今も論争が続く古生物学上の大きな問題の一つとなっています。

東北大学電気通信研究所の佐藤光暁、小川久介大学院生(当時)、福原洸助教、石黒章夫教授と神奈川大学の佐藤たまき教授、マンチェスター大学のWilliam Sellers教授らの研究グループは、イヌやネコをはじめとする様々な現生四足動物種の足並みを再現可能な生物規範型の自律分散制御(注2)を基盤に設定することで、首長竜型ロボットに羽ばたき周期や形態の変化に呼応した前後ヒレ間の合理的な協調パターンを生成させることに成功しました。絶滅動物が状況依存的に運動様式を柔軟に調整していた様子を復元しうる新たな手法として期待されます。

本研究成果は、科学誌Scientific Reportsに2024年10月28日付けで掲載されました。

図1. 特異な形態を持つ首長竜。ヒレで遊泳する現生動物は、前ヒレを活用して推進するが、首長竜は前ヒレも後ろヒレも非常に大きく、どちらも推進に活用し得ると考えられている。首長竜の四肢の協調問題は「四翼問題(four-wing problem)」として議論されており、古生物学における長年の運動復元課題の一つである。

【用語解説】

注1.復元:古生物の形態や動きを何かしらの指標やアルゴリズムから構成する手法である。構成されたものは実際の古生物の形態や動きと比較することは原理的にできないため、再現とは異なる。

注2.渦列:同じ循環を持つ渦糸が、直線上で等間隔に並んだものを渦列という。ヒレの羽ばたき運動では、打ち下ろし運動と打ち上げ運動のそれぞれで循環方向が逆転した渦列が生み出される

【論文情報】

タイトル:Rethinking the four-wing problem in plesiosaur swimming using bio-inspired decentralized control
著者:Akira Fukuhara*, Mitsutoshi Sato, Hisayuki Ogawa, Tamaki Sato, William Sellers, Akio Ishiguro
*責任著者:東北大学電気通信研究所 助教 福原 洸
掲載誌:Scientific Reports
DOI:101038/s41598-024-55805-z

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学電気通信研究所
教授 石黒章夫
TEL:022-217-5465
Email: akio.ishiguro.b1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学電気通信研究所
総務係
TEL:022-217-5420
Email: riec-somu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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