2024年 | プレスリリース?研究成果
金属微粒子の表面構造制御で最大5倍近い水素製造触媒活性を実現 水素エネルギー社会への貢献に期待
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 教授 根岸雄一
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 粒径1 nm程度の極微細な金属微粒子(金属ナノクラスター)(注1)の表面構造を制御する合成手法を確立しました。
- 本手法により得られた新規金属ナノクラスターは、電極触媒として、従来の表面構造のものと比較して最大で5倍近い水素(H2)生成触媒活性を達成しました。
- 今後は、他の合成系に本手法を組み合わせることで、高活性触媒開発を促進するとともに水素エネルギー社会の実現が期待されます。
【概要】
H2は将来の「ネット?ゼロ?カーボン」社会において最も重要な燃料のひとつと考えられており、水(H2O)からH2を製造できる電極触媒の開発は非常に重要です。しかし、現在の電極触媒には貴金属が使用されておりコストが高く、実用化にはより少量で高活性を示す触媒の開発が必要不可欠です。
東北大学多元物質科学研究所の根岸雄一 教授、東京理科大学の川脇徳久 講師とSakiat Hossain助教(研究当時)、同大学院修士課程の瀬良美佑 氏、吉川咲良 氏らの研究グループは、粒径1 nm程度の極微細な金属ナノクラスターの表面構造を制御する合成手法を確立しました。具体的には粒径1 nm程度の金属微粒子の表面構造を制御できる合成手法を確立し、得られた新規ナノ物質を電極触媒に応用することで、水素(H2)生成触媒活性の向上に成功しました。
これにより、従来の金白金(AuPt)合金ナノクラスター触媒と比較して、最大で5倍近いH2生成触媒活性を達成することに成功しました。本研究によって、原子レベルで制御可能な金属ナノクラスターの更なる高活性化が可能になり、次世代エネルギー社会の構築が大きく加速されると期待されます。
本研究成果は、2024年10月15日公開のJournal of the American Chemical Society誌に掲載されました。
図1. (a) [Au24Pt(TBBT)18]0、(b) [Au24Pt(TBBT)12(TDT)3]0および(c) [Au24Pt(TBBT)12(PDT)3]0 の合成条件と幾何構造
【用語解説】
注1. 金属ナノクラスター(NC):数個から数百個の金属原子で構成される微粒子。
【論文情報】
タイトル:Atomically Precise Au24Pt(thiolate)12(dithiolate)3 Nanoclusters with Excellent Electrocatalytic Hydrogen Evolution Reactivity
著者:瀬良美佑1、Sakiat Hossain2,*、吉川咲良1、竹前花南1、池田彩華1、田中智也1、幸坂大河1、新堀佳紀2、川脇徳久2,3、根岸雄一2,4,*(1. 東京理科大学理学研究科、2. 東京理科大学研究推進機構総合研究院、3. 東京理科大学理学部第一部、4. 東北大学多元物質科学研究所)
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 根岸雄一
東京理科大学研究推進機構総合研究院 助教 Sakiat Hossain(研究当時)
掲載誌: Journal of the American Chemical Society
DOI:10.1021/jacs.4c10868
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 根岸雄一
TEL: 090-4200-9467
Email: yuichi.negishi.a8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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