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マイクロ波ロケットの推進性能を決めるプラズマの観測手法を提案 ロケット打ち上げコストの大幅削減に一歩前進

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 准教授 高橋聖幸
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ミリ波(注1の干渉により観測される信号を用いて、打ち上げに燃料が要らないマイクロ波ロケット(注2内部のプラズマ(注3形成領域を観測する新しい手法を提案しました。
  • 電磁波、プラズマ、流体の連成シミュレーションを用いて、提案手法の有効性を数値的に確認しました。
  • 本成果は、マイクロ波ロケット内部のプラズマ形成と推力獲得機構の解明への貢献が期待されます。

【概要】

ミリ波ビームを介してエネルギーを伝送することで、燃料を必要とせずに飛行する「マイクロ波ロケット」と呼ばれる新しい宇宙輸送技術が提案されています。ミリ波ビームを照射されたマイクロ波ロケット内部では、ミリ波の電磁エネルギーにより空気がプラズマ化される領域がミリ波ビーム源に向かって高速で進展する現象が生じます。ミリ波によって生成されたプラズマを介してマイクロ波ロケットは推進力を得るため、この現象はロケットの推進性能を決めるものですが、ハイスピードカメラを用いる従来の観測法では、カメラの死角となるビーム中心軸部での進展現象が連続的かあるいは離散的なのかを正確に捉えられないという課題がありました。

東北大学大学院工学研究科の鈴木颯一郎大学院生と高橋聖幸准教授は、プラズマを生成する入射ミリ波と、プラズマによって反射されるミリ波の干渉で生じる定在波を観測し、その時間変動を分析することで、その進展様式を区別する観測手法を提案しました。電磁波、プラズマ、流体の連成数値モデルを用いた数値シミュレーションを実施し、提案手法が有効であることを確認しました。この成果は、マイクロ波ロケット内部におけるプラズマ形成と推力獲得機構の解明への貢献が期待されます。

本研究成果は2024年10月15日、科学誌Journal of Applied PhysicsにFeatured articleとして掲載され、表紙に選ばれました。

図1. マイクロ波ロケットの推力獲得サイクル

【用語解説】

    注1. ミリ波
    周波数30~300 GHzの電磁波。ミリ波の位相を制御する事で、指向性を持った高エネルギー密度のミリ波ビームとして放射する事ができる。マイクロ波(30 GHz未満)よりも高い周波数帯のため、直進性が比較的高く、大気減衰が弱い周波数帯もあるため、100km程度の長距離伝送が可能とされている。

    注2. マイクロ波ロケット
    大電力のミリ波を用いて、空気中で放電を起こすことで発生する衝撃波から推力を得るビーミング推進の一種。東京大学と量子科学技術研究開発機構の研究グループが2003年に提案し、小型マイクロ波ロケットによる室内打ち上げ実験を行っている[1,2]。本来は「ミリ波ロケット」とするべきだが、わかりやすさを優先してマイクロ波ロケットと命名されている[1]。空気を利用できない地球大気圏上層部での飛行や、月面等から打ち上げる場合にはプラズマ化させるための水蒸気や貴ガス等を燃料として搭載する必要がある。

    注3. プラズマ
    高温や強い電磁場の下で、低温では中性だった気体がプラスの電荷を持ったイオンとマイナスの電荷を持った電子に分かれた状態。電荷を持っているため、電磁波のエネルギーを吸収して加熱することができる。

    *[1][2]については下記の詳細PDFをご覧ください。

    【論文情報】

    タイトル:Numerical Simulation of Electromagnetic-wave Interference induced by ionization-front of Millimeter-wave Discharge at Subcritical Conditions and Application to Discharge Structure Identification
    著者:Soichiro Suzuki* and Masayuki Takahashi
    *責任著者:東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻 大学院生 鈴木颯一郎
    掲載誌:Journal of Applied Physics
    DOI:10.1063/5.0225500

    Soichiro Suzuki and Masayuki Takahashi, Journal of Applied Physics, Vol. 136, Article ID 153301, 2024; licensed under a Creative Commons Attribution (CC BY) license.

    詳細(プレスリリース本文)PDF

    問い合わせ先

    (研究に関すること)
    東北大学大学院工学研究科
    准教授 高橋 聖幸
    TEL: 022-795-3864
    Email: masayuki.takahashi.c8*tohoku.ac.jp
    (*を@に置き換えてください)

    (報道に関すること)
    東北大学大学院工学研究科情報広報室
    担当 沼澤 みどり
    TEL: 022-795-5898
    Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
    (*を@に置き換えてください)

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