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日本人の薬剤標的遺伝子の多様性の解析 5万4千人のデータからGPCRにおける多様性を探索

【本学研究者情報】

〇大学院薬学研究科 分子細胞生化学分野
教授 井上飛鳥
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 薬剤の主要な標的として知られる受容体タンパク質群GPCR(注1)に存在する個人差(多様性)を探索し、これまでの知見と組み合わせることで、タンパク質の性質に対する個人差の影響を予測しました。
  • 東北メディカル?メガバンク機構の提供する日本人5万4千人分のゲノムデータを用いることで、日本人のもつ多様性を特徴づけました。
  • GPCRは多数の薬剤の標的となっているため、今回の研究で得られた多様性の解析結果は日本人を対象とした薬剤の開発や個別化医療に役立つことが期待されます。

【概要】

ヒトのもつ遺伝情報は個人ごとにわずかずつ異なります。ほとんどの差異は無害ですが、まれに疾患の原因となったり薬剤の効果を変えてしまうこともあります。この原因のひとつとして、遺伝情報の変化によって遺伝子から産生されるタンパク質のアミノ酸配列が置換されていることが挙げられます。

今回、東北大学大学院薬学研究科の生田達也助教、鈴木璃子大学院生、井上飛鳥教授のグループは、東北メディカル?メガバンク機構の提供する日本人5万4千人のデータから、薬剤の主要な標的として知られる受容体タンパク質群GPCR(本研究の対象は約400種類)について、個人ごとの差異を探索しました(図1)。その結果、アミノ酸置換によりタンパク質の性質を変えうる差異が2万種類以上見つかりました。さらに、その位置をタンパク質の立体構造上の位置と照らし合わせ、アミノ酸置換の影響について予測しました。本研究の結果は日本人の個別化医療に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2024年9月23日に科学誌Genes to Cellsに掲載されました。

図1. 本研究の概要 日本人5万4千人の全ゲノムデータから作成されたアリル頻度パネルのデータセットから、ヒト非嗅覚GPCRの約400遺伝子上に存在する一塩基置換を抽出した。それらのうち、アミノ酸の変化を引き起こすものがGPCRの構造のどこに位置するかをマップし、さらなる解析を行った。

【用語解説】

注1. GPCR:Gタンパク質共役型受容体。約2万種類存在するヒトタンパク質のうち、約800種類を占める最大のタンパク質スーパーファミリーである。その半数は薬剤の標的とみなされない嗅覚受容体であるが、残りの半数の非嗅覚受容体は承認薬の約3割の標的となっている。

【論文情報】

タイトル:The repertoire of G-protein-coupled receptor variations in the Japanese population 54KJPN
著者:Tatsuya Ikuta*, Riko Suzuki, Asuka Inoue*
*責任著者:東北大学大学院薬学研究科 助教 生田達也、同教授(京都大学大学院薬学研究科 教授 併任)井上飛鳥
掲載誌:Genes to Cells
DOI:http://doi.org/10.1111/gtc.13164

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問い合わせ先

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
教授 井上 飛鳥(いのうえ あすか)
TEL: 022-795-6861
Email: iaska*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
総務係
TEL: 022-795-6801
Email: ph-som*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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