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Cr?Ge?Te?薄膜の従来材に比べて二桁以上高いひずみ検出機能を発見 ─ ウェアラブル健康診断システム用の新材料として期待 ─

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 教授 須藤祐司
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 電子デバイス材料として既存のシリコン系を上回る性能が期待されているカルコゲナイド(注1系のアモルファスCr2Ge2Te6(CrGT)薄膜を調べたところ、ひずみに対する電気抵抗の変化率である「ゲージ率(注2」が一般的な半導体薄膜に比べて二桁以上と極めて大きいことを発見しました。
  • 柔軟な基板上に成膜したアモルファスCrGT薄膜の巨大な抵抗変化の主な要因は、変形によるき裂の発生と進展であることを明らかにしました。
  • アモルファスCrGT薄膜を用いた簡易的なウェアラブルセンサーを試作して評価した結果、人間の脈拍に応答する鮮明な抵抗変化を確認しました。

【概要】

近年、身に着けたまま健康状態がわかる電子繊維や電子皮膚(注3といった新しいデバイスの発展が期待されています。その開発において高感度のひずみセンサーは不可欠であり、材料の圧抵抗効果(注4を利用したものは、高安定性、高耐久性、低コストといった利点を持ちます。純金属の数十倍の圧抵抗効果を持つ半導体材料は、微小な電気機械システム(MEMS(注5技術に適用できるため、脈拍や心拍など、極めて小さなひずみを検出できる超高感度な材料創成への応用が期待されています。

京都大学の王吟麗(オウ?ギンレイ)特定助教(研究当時:東北大学大学院工学研究科 大学院生)、東北大学大学院工学研究科の須藤祐司教授(材料科学高等研究所(WPI-AIMR)兼務)、同大学大学院環境科学研究科の成田史生教授らの研究グループは、柔軟なポリイミド基板上に成膜したアモルファスCr2Ge2Te6半導体(CrGT)薄膜の圧抵抗効果を測定し、60,000という極めて大きなゲージ率を観測し、他の半導体材料より数百倍高い感度を示すことを発見しました。本薄膜の巨大な抵抗変化はひずみによるCrGT薄膜内のき裂発生と進展に起因していることを明らかにし、本薄膜を用いた簡易的なひずみセンサーにより、脈拍に応答する明確な抵抗変化を確認しました。CrGT薄膜は柔軟性を持つ基板に一般的なスパッタリング法で成膜でき、その後の熱処理が不要であるため、さまざまな柔軟な基板に適用可能な超高感度ひずみセンサー材料として活用が期待できます。

本成果は2024930日(現地時間)付で、英国王立化学会誌Materials Horizonsに掲載されました。

図1. 引張変形中のCr?Ge?Te?薄膜の抵抗変化率とひずみの関係。

【用語解説】

注1. カルコゲナイド
周期表で、酸素(O)と同じ族に属する元素(硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)など)からなる化合物のことを指します。

注2. ゲージ率
材料にひずみを与えると電気抵抗が変化します。ゲージ率は、ひずみによる電気抵抗の変化率(抵抗変化量/初期抵抗値)と与えたひずみとの比率を指します。

注3. 電子繊維や電子皮膚
電子繊維は、繊維状の素材に電子機能を埋め込んだものを指し、電子皮膚は、人間の皮膚のように柔軟かつ伸縮性を持ち、触覚などの感覚を持つことができる素材を指します。

注4. 圧抵抗効果
半導体材料や金属材料に機械的なひずみを与えたとき、それら材料の電気抵抗が変化する効果を指します。ピエゾ抵抗効果とも呼びます。

注5. 電気機械システム(MEMS)
センサーやアクチュエータ、電子回路などを、シリコン基板やガラス基板、または有機材料基板等の上に、微細加工技術を用いて集積したデバイスのことを指します。

【論文情報】

タイトル:An amorphous Cr?Ge?Te?/polyimide double-layer foil with an extraordinarily outstanding strain sensing ability
著者: Yinli Wang, Yi Shuang, Mihyeon Kim, Daisuke Ando, Fumio Narita and Yuji Sutou*
責任著者:*東北大学大学院工学研究科 教授 須藤 祐司
掲載誌:Materials Horizons
DOI:10.1039/D4MH00616J

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 須藤 祐司
TEL: 022-795-7338
Email: ysutou*material.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院環境科学研究科
教授 成田史生
TEL: 022-795-7342
Email: narita*material.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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