本文へ
ここから本文です

5億年前から使われてきた植物の幹細胞性を制御する仕組みを解明 最小の分裂組織をもつコケ植物から明らかになった幹細胞維持システム

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 助教 秦有輝
研究室ウェブサイト
生命科学研究科 教授 経塚 淳子
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 植物が一生を通じて成長できるのは、茎や根の先端部に、様々な細胞を分化させる幹細胞をもつからです。その植物幹細胞としての性質を決める仕組みの一端を、コケ植物を用いて解明しました。
  • 幹細胞が2つに分裂すると、片方の細胞には植物ホルモンであるサイトカイニン(注1)が蓄積し、その細胞は幹細胞であり続ける一方で、もう片方の細胞にはPpTAWタンパク質(注2)が蓄積することで葉などの組織へと分化することを見出しました。
  • サイトカイニンおよびPpTAWは陸上植物の進化の歴史において5億年前から使われてきた共通の幹細胞制御因子であると考えられます。

【概要】

植物が旺盛に繁茂できるのは、茎や根の先端部にある分裂組織に様々な種類の細胞を生み出すことのできる多能性幹細胞をもち、生涯にわたって枝を伸ばし葉などの器官を作り続けられるからです。しかし、植物の多能性幹細胞としての性質がどのように決定されているのかはまだよくわかっていません。

東北大学大学院生命科学研究科の秦有輝助教、経塚淳子教授らの研究グループは、多能性幹細胞が1つだけという最小の分裂組織をもつコケ植物を用いて、植物の幹細胞の性質を決定する仕組みを解析しました。その結果、幹細胞が2つに分裂すると片方の細胞では植物ホルモンであるサイトカイニンが蓄積することで幹細胞のままであり続ける一方、もう片方の細胞ではPpTAWタンパク質が蓄積し、葉などの組織への分化を促すことがわかりました。コケ植物は今から5億年ほど前に(被子植物が属する)維管束植物の系統と分かれた植物群ですが、サイトカイニンおよびPpTAWは被子植物でも分裂組織の発達を制御しています。つまりこれらの因子は5億年前から使われてきた共通の幹細胞制御因子であると考えられます。

本研究成果は、陸上植物の進化を理解する上で重要な知見です。

本研究成果はScience Advances誌に2024年8月28日付で掲載されました。

図1. 陸上植物の系統

【用語解説】

注1. サイトカイニン
植物ホルモンの一つ。細胞の増殖を促進し、茎と葉の形成を促進するほか、植物の成長において様々な機能をもつ。

注2. PpTAWタンパク質
DNAに結合して遺伝子の発現を調節する転写因子として機能する。陸上植物に広く保存されている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
助教 秦 有輝
TEL: 022-217-5710
Email: yuki.hata.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs02

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています

このページの先頭へ