本文へ
ここから本文です

次世代エポキシ樹脂の分子構造と力学?光学特性の相関を計算計測融合で解明 ─ 新規樹脂の設計手法となることに期待 ─

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻
助教 川越吉晃
researchmap

【発表のポイント】

  • エポキシ樹脂(注1)は半導体から航空機まで幅広く用いられる熱硬化性樹脂材料であり、組成選択によって多様な機能を発現することが可能です。
  • その中でも高い力学特性と耐光性を有し、次世代LEDなどへの適用が期待できる非芳香族エポキシ樹脂(注2に注目し、量子化学計算(注3、分子動力学シミュレーション(注4、力学試験(注5、X線散乱法(注6と多角的な手法を連携し、その分子構造と材料特性の相関を明らかにしました。
  • 本成果は、分子スケールの観点からの新規樹脂設計の指針提案だけでなく、計算計測融合研究を社会へ還元するモデルケースになると期待されます。

【概要】

エポキシ樹脂をはじめとした熱硬化性樹脂は、高い力学や耐熱性を示し、半導体封止材や航空機向け複合材料の母材樹脂など、幅広い産業分野で活用されています。熱硬化性樹脂はその主剤であるプレポリマーと硬化剤の選択によって様々な材料特性を発現する高分子合成が可能であり、各分野で求められる要件に合わせた材料設計が行われてきました。しかし、その根源たる分子構造と巨視的な材料特性の相関関係は十分には解明されていませんでした。

東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻の川越吉晃助教らのグループは、高い耐光性から次世代LEDなどへの適用が期待できる非芳香族エポキシ樹脂に注目。同グループの開発した分子シミュレーション手法に加え、量子化学計算、力学試験、3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(注7)を用いたX線散乱など、数値計算と先端計測を連携することで分子構造と力学?光学特性の相関を明らかにしました。具体的には、プレポリマーの鎖長が長いほどポリマーの耐熱性と強度はやや下がるものの壊れにくく、短いほどボイドが連結して壊れやすいことなどがわかりました。計算計測融合による本成果は、高度な設計要求をみたす次世代材料開発の高速化や省コスト化に貢献すると期待されます。

本研究成果は、2024年8月27日、学術雑誌Physical Chemistry Chemical Physics(PCCP)に公開されました。

図1. 本研究で用いた鎖長の異なるTEPIC? 3種。中央にトリアジン環という6員環構造があり、3本のエポキシ基を有している。

【用語解説】

注1. エポキシ樹脂:高分子内に含まれるエポキシ基を開環させて架橋構造化させることで硬化する熱硬化性樹脂の総称で、産業的には接着剤?封止材に多用されています。架橋させる前のプレポリマーと硬化剤の組合せにより多様な物性を発現するエポキシ樹脂が合成できます。

注2. 非芳香族エポキシ樹脂:芳香環(ベンゼン環やナフタレンなど)を持たないエポキシ樹脂。

注3. 量子化学計算:量子力学の理論を用いて分子の電子構造や化学反応の性質を予測?解析する手法です。

注4. 分子動力学シミュレーション:分子の挙動や相互作用をコンピュータを使用して数値計算すること、またその手法。

注5. 力学試験:主に引張試験などで材料の強度や剛性などの力学特性を評価する手法の総称です。

注6. X線散乱法:X線を用いて物質の内部構造を調べるための分析技術です。

注7. 3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu:東北大学青葉山新キャンパス内にある国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)と一般財団法人光科学イノベーションセンター(PhoSIC)を代表機関とする放射光施設です。太陽光の約10億倍の明るさを持つX線を生成して物質に照射し、様々な物質の内部構造を詳細に観察できます。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
助教 川越 吉晃
TEL: 022-795-6981
Email: kawagoe*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs09 sdgs12

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています

このページの先頭へ