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ミトコンドリア局在タンパク質の分解誘導技術mitoTPDを開発 新しい創薬方法論やミトコンドリア研究技術への展開に期待

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 助教 友重秀介
生命科学研究科 教授 石川稔
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ミトコンドリア内のタンパク質分解酵素を利用して、ミトコンドリアに局在する標的タンパク質の分解を誘導する薬剤を開発しました。
  • ミトコンドリア形態を変化させる標的タンパク質を分解することで、ミトコンドリア形態変化を制御することに成功しました。
  • がんや神経変性疾患など、ミトコンドリアが関わるとされる疾患治療や、ミトコンドリア研究のための技術へつながることが期待されます。

【概要】

近年、がんや神経変性疾患といった疾患とミトコンドリアとの関わりが明らかになり、ミトコンドリアを標的とする創薬手法の開発に関心が寄せられています。低分子化合物を用い、生体内のタンパク質分解機構を利用して任意のタンパク質を選択的に分解へと導く技術targeted protein degradation(TPD)(注1)が新しい創薬モダリティ(注2)として注目されています。しかし、ミトコンドリアは独自のタンパク質分解機構を持っており、従来のTPD技術ではミトコンドリアに局在するタンパク質を標的にできませんでした。

東北大学大学院生命科学研究科の友重秀介助教、石川稔教授らのグループは、これまでとは異なる化合物デザインによってミトコンドリアで機能するTPD技術「mitoTPD」を開発しました。ミトコンドリアを断片化するタンパク質をミトコンドリアに過剰発現させた細胞に本技術を用いることで、ミトコンドリア形態の正常化にも成功しました。これは、ミトコンドリアの形態操作やミトコンドリア異常の回復への活用が可能な技術であり、新たなミトコンドリア創薬手法や新規研究技術への展開が期待されます。

本成果は、英国王立化学会の学術誌Chemical Science誌にて、2024年8月29日付けで公開されました。

図1. 本研究で開発したmitoTPD技術の概要。

【用語解説】

注1. Targeted protein degradation(TPD)
低分子化合物などからなる分解薬によって標的タンパク質の分解を誘導する技術。生体内のタンパク質分解機構へ標的タンパク質をリクルートすることで分解へと導く。特にproteolysis targeting chimeras(PROTACs)と呼ばれる分解薬を用いる方法論が創薬分野で一大トレンドとなっており、PROTACsとは異なるメカニズムの新しい分解薬や技術の開発が盛んにおこなわれている。

注2. 創薬モダリティ
創薬方法論のこと。近年は従来の低分子創薬では対応できない疾患に向けた新しいモダリティとして抗体医薬や核酸医薬、中分子創薬、標的タンパク質分解薬などの研究開発が行われている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
助教 友重秀介
TEL: 022-217-6198
Email: stomoshi*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院生命科学研究科
教授 石川稔
TEL: 022-217-6197
Email: minoru.ishikawa.e4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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