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「ヤヌス粒子」を使い新型コロナウイルスを15分で定量できるシステムを開発 ─ 他の感染症や疾病マーカーへの適用拡大にも期待 ─

【本学研究者情報】

〇材料科学高等研究所 教授 藪浩
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 片面に蛍光発光色素、反対面に磁性粒子と抗体を結合したヤヌス(注1粒子(2つの面を持つ粒子)を作製しました。
  • 検体に触れることなく測定から廃棄まで可能なマイクロ流路チップと蛍光測定による定量検査システム「Express Biochecker」を開発しました。
  • ヤヌス粒子の蛍光をプローブ(注2として、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のヌクレオカプシドタンパク(Nタンパク)を15分で定量測定することが可能になります。

【概要】

新型コロナウイルスなどの感染症において、これまで診断とウイルス量の同定にはPCR(注3ELISA(注4などの手法が用いられてきました。しかしながらどちらも時間がかかる上、検体量を多く必要とし、操作が複雑で検査者がウイルスに暴露される可能性があるなど、多くの課題がありました。

東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の藪浩教授(主任研究者、同研究所水素科学GXオープンイノベーションセンター副センター長)、同大災害科学国際研究所の児玉栄一教授、同大マイクロシステム融合研究開発センターの戸津健太郎教授、および医療?ヘルスケア用診断機器開発などを手掛ける株式会社ハプロファーマ(仙台市、大滝義博社長)からなる研究グループは、マイクロ流路チップと蛍光測定による新しい定量検査システム「Express Biochecker」を開発しました。片面に蛍光発光色素、反対面に磁性粒子と抗体を結合したサブミクロンサイズのヤヌス粒子をプローブとして用いることが特徴です(図1)。本システムを用いると、わずか数十?Lの検体から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のNタンパク量(注5を15分で定量測定することが可能になります。SARS-CoV-2の検査だけでなく、様々な感染症や疾病マーカー(生物指標化合物)を高感度に定量する新たなシステムとして期待される成果です。

本研究成果は現地時間815日に米国化学会(American Chemical Society)におけるコロイド?界面科学分野の代表的な専門誌であるLangmuirのオンライン速報版に掲載され、Supplementary Coverとしても採用されました。

図1. 蛍光磁性ヤヌス粒子の透過型電子顕微鏡像と蛍光像(左上)と抗体結合蛍光磁性ヤヌス粒子を用いたNタンパク質検出の模式図(右上)、本研究で開発したExpress Biocheckerの外観図(左下)、および新型コロナウイルス(CoV-2, 黄色)とコロナウイルス(229E, 青色)のNタンパクの濃度測定結果(右下)。

【用語解説】

注1. ヤヌス
ローマ神話の神様の名前で表と裏の顔をもつことで知られている。

注2. プローブ
元々は測定や実験などのために試料に接触して測定を行う針のことを指すが、抗原抗体検査では検出するために用いる物質のことを指す。

注3. PCR
Polymerase Chain Reactionの略で正式名称は「ポリメラーゼ連鎖反応」といい、ウイルスのDNAを増幅させて検出する検査手法。

注4. ELISA法
Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assayの略で、抗原抗体反応の組合せを利用し、酵素標識した抗原あるいは抗体により、酵素活性を検出することで抗原濃度を測定する手法。高感度で定量的なイムノアッセイ手法として様々なマーカー分子の検出?定量に用いられている。

注5. Nタンパク量
ウイルスの遺伝子を包む殻のような構造を持つ「ヌクレオカプシドタンパク」の略称であり、表面に存在するスパイク(S)タンパクと比べアミノ酸配列の変異が起こりにくく、ウイルス種を判別しやすいため、ウイルス検査に用いられる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
教授 藪 浩(やぶ ひろし)
TEL: 022-217-5996
Email: hiroshi.yabu.d5*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
広報戦略室
TEL: 022-217-6146
Email: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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