2024年 | プレスリリース?研究成果
ダイヤモンドをシリコンに固定した超精密微小機械応力センシングを開発 ─ 微小電気機械システムの高度化に新展開 ─
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 機械機能創成専攻
准教授 戸田雅也
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- ダイヤモンド量子センサー(注1)を用いた微小機械応力センシングを開発しました。
- ダイヤモンド結晶内の格子欠陥である窒素-空孔中心(Nitrogen-vacancy center、NVCまたはNVセンター)が発する蛍光の観察方法には一般的な光検出磁気共鳴(ODMR)法(注2)を用いました。そして機械振動をストロボスコープの原理(注3)を活用することで、特定の変位における圧縮や引張応力を観測しました。
- 片持ち梁の上下振動だけでなく、ねじれ振動に対してもNVCに応力が加わり、ODMRスペクトルのピークシフトが得られることが確認されました。
- この技術により、様々な形状に加工された単結晶ダイヤモンドを用いて、ダイヤモンド結晶内の量子状態と機械振動とを結合した新たな「量子×電気機械」デバイスの開発に応用することができます。
【概要】
ダイヤモンド結晶内で量子状態を保つことができるNVCは、高感度なダイヤモンド量子センサーとして応用されています。近年、単結晶ダイヤモンドの加工技術の進歩により、ダイヤモンドは微小電気機械システム(MEMS)(注4)の次世代センサーを担う有力な材料の1つとして再注目されています。
東北大学大学院工学研究科の戸田雅也准教授のグループは、ナノメートルサイズのダイヤモンド(ナノダイヤモンド)結晶をシリコン振動子上に固定し、ODMR法により振動子上の応力をモニタする技術を開発しました。ダイヤモンド結晶の結晶軸や静磁場の方向を調整することで、期待される表面応力に依存したODMRスペクトルのピークシフトが得られました。この成果により、将来、ダイヤモンド結晶内の量子状態と機械振動とを結合した「量子×電気機械」デバイスの開発につながると期待されます。
本研究成果は、2024年8月9日、学術誌Functional Diamondに掲載されました。
図1. (左)シリコン製カンチレバーの根元部にナノダイヤモンドを固定し蛍光強度計測する。(右)シリコン表面に分散して点在しているナノダイヤモンドの画像とデバイスの断面図。
【用語解説】
注1. ダイヤモンド量子センサー
ダイヤモンド結晶内で磁場や電界、温度、圧力によるエネルギーレベルの変化によって蛍光を発するNVCを利用した超高感度センサーのこと。
注2. 光検出磁気共鳴(ODMR)法
結晶欠陥の電子スピン状態を光を用いて読み出すことができる方法。掃引周波数に対して、蛍光強度減少スペクトルが得られる。
注3. ストロボスコープの原理
撮影周期を調整し、動いている物体の周期と一致したとき残像効果により、その物体が静止した状態に見えること。
注4. 微小電気機械システム(MEMS)
Micro Electro Mechanical Systemsの略。シリコン基板やガラス基板などに機械要素部品のセンサー、アクチュエーター、電子回路などを組み込んだミクロンレベルの構造を持つ電気で動く機械デバイス。
問い合わせ先
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
准教授 戸田 雅也
TEL: 022-795-5810
Email: toda*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科
情報広報室 担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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