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長寿命な小型酸素センサーを開発 金属流出のない新規電極の実現によりセンサー性能の低下を回避

【本学研究者情報】

〇材料科学高等研究所/多元物質科学研究所 教授 西原洋知
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • プルシアンブルー(PB)を担持した高結晶性グラフェン被覆多孔性シリカ球(PB/G/PSS)の電極化に成功
  • 銀溶出のない参照極の開発により、小型酸素センサーの連続使用の寿命を5倍以上に
  • 救急、医療現場での血液ガス分析装置に展開可能

【概要】

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)化学プロセス研究部門 ナノ空間設計グループ 伊藤徹二 主任研究員、長谷川泰久 研究グループ長らは、株式会社テクノメディカ 方式開発部 吉田朗子 主任ら、国立大学法人 東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)西原洋知 教授(多元物質科学研究所 兼務)ら、富士シリシア化学株式会社 井澤謙一 研究開発グループ リーダーら、国立大学法人 筑波大学大学院 医学学位プログラム小児外科学分野 藤井俊輔 医師(現:地方独立行政法人 東京都立病院機構 東京都立小児総合医療センター)と共同で、連続使用可能な長寿命小型酸素センサーの開発に成功しました。この成果は、作用極への銀汚染が生じない参照極の開発によって実現しました。

従来の小型酸素センサーは、銀/塩化銀(Ag/AgCl)参照極から銀イオンが溶出し、作用極上に析出することで正確な測定ができなくなるという問題がありました。われわれは、プルシアンブルーを高分散担持した高結晶性グラフェン被覆多孔性シリカ球(PB/G/PSS)を参照極にすることで、イオンの溶出がなく長期間連続して使用できる小型酸素センサーの開発に成功しました。本成果は、医療現場における血中酸素分析に展開可能であり、「生活の質QOL(Quality of life)の向上」に貢献できると考えられます。

なお、この技術の詳細は、2024年8月20日に「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載され、表紙(Supplementary Journal Cover)にも掲載されます。

酸素センサーの安定性と電極汚染のメカニズム

【用語解説】

作用極、対極、参照極
酸素濃度を測定するセンサーを構成する電極。作用極は計測対象の酸素が反応する場となる電極。対極は、電流が流れる作用極の相手となる電極。参照極は、作用極に印加する電位を制御するための電位の基準となる電極。新規開発の参照極では、プルシアンブルーの酸化還元反応で参照極が示す電位を一定に保つことができるため、作用極と参照極間の印加電位を一定に維持することができる。

プルシアンブルー
鉄イオンと強く結合し、安定な化合物を形成する濃青色の物質。プルシアンブルーを使用したことで、従来の参照極と違って、作用極を汚染する金属イオンが溶出しない。

グラフェン
炭素原子が六角形に結びついている原子1個分の厚さのシート状の化合物。導電性で伝熱性や強度に優れ電極材などに使用される。

多孔性シリカ球
内部に多数の細孔をもつ粒径が10~50 μmのシリカ球。細孔内部に多量の鉄プルシアンブルー錯体を担持できる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学 材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
広報戦略室
Email:aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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