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血液中の代謝物組成と認知機能低下との関連 ~アミノ酸の保有は認知機能高値、 ケトン体は認知機能低値と関連~

【本学研究者情報】

〇学際科学フロンティア研究所 助教 木内桜 〇東北メディカル?メガバンク機構 教授 寳澤篤

東北メディカル?メガバンク機構ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 東北メディカル?メガバンク計画(注1)のコホート参加者、約3,000人における血液中の代謝物(注2)パターンと認知機能との関連を検討しました。
  • その結果、ロイシン、イソロイシンなどの必須アミノ酸(注2)を含むパターンや、グルタミン、セリンなどの非必須アミノ酸(注2)を含むパターンを相対的に多く有しているグループでは、認知機能が低下している者の割合が低く、アセトンなどのケトン体(注3)を含むパターンを相対的に多く有しているグループは認知機能が低下している者の割合が高くなっていました。
  • 代謝物と認知機能の関連(相関関係)が示されたことから、将来的には血液検査による認知機能低下の早期発見や予防に有用となると期待されます。

【概要】

欧米等で行われた先行研究から、代謝物の組成と認知機能との関連が示唆されており、血液中の代謝物は認知機能低下の予測因子となりうることが報告されています。しかし、アジアにおいて数千人規模を対象とした研究はありませんでした。

東北大学東北メディカル?メガバンク機構(ToMMo)では、数万人の血漿中のメタボローム解析(注4)を実施しています。ToMMoの小柴生造教授、寳澤篤教授、東北大学?学際科学フロンティア研究所木内桜助教らを中心とする研究グループは、この解析結果のうち60歳以上の高齢者を対象に、代謝物の主成分解析(注5)の結果と認知機能との関連を調べました。その結果、ロイシン、イソロイシンなどの必須アミノ酸を含むパターン、もしくはグルタミン、セリンなどの非必須アミノ酸を含むパターンを相対的に多く有しているグループでは、認知機能が低下している者の割合が低く、一方アセトンなどのケトン体を含むパターンを相対的に多く有しているグループでは認知機能が低下している者の割合が高いことが明らかとなりました。

本研究の結果は、横断研究(注6)のため相関関係のみで因果関係は不明ですが、バランスのとれた食事によって必須アミノ酸レベルを維持することの重要性や、代謝物のモニタリングが認知機能低下予防に有用である可能性を示しています。

本研究成果は2024年7月6日に、日本疫学会誌Journal of Epidemiologyにてオンライン公開されました。

図1. 血漿中の代謝物パターンと認知機能低下との関連

【用語解説】

注1.東北メディカル?メガバンク計画:日本最大規模の一般住民ゲノム?コホート調査を実施しており、次世代医療の実現に貢献するため、個人のゲノム情報に紐づく多様なデータから複合バイオバンクを構築し、長期追跡している。

注2.必須アミノ酸?非必須アミノ酸:エネルギー産生栄養素の一つであるたんぱく質を構成する有機化合物。必須アミノ酸は生体内では合成できないため、たんぱく質として、食事から摂る必要がある。

注3.ケトン体:脂肪の合成や分解の過程で産生される、中間代謝産物のこと。

注4.メタボローム解析:生体内に含まれる代謝物(メタボライト)を網羅的に解析する方法。

注5.主成分解析:データの特徴をまとめる解析手法の一つ。多くの変数(ここでは代謝物)をより少ない合成変数に要約できる。

注6.横断研究:ある特定の集団に対して、ある一時点におけるデータを収集し、分析や検討をする研究デザイン。疾病とその要因の時間的な前後関係が不明なため、因果関係の推測が困難であり、相関関係を示すにとどまる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
歯学研究科国際歯科保健学分野
助教 木内 桜(きうち さくら)
Email:sakura.kiuchi.e2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学東北メディカル?メガバンク機構
広報戦略室長 長神 風二(ながみ ふうじ)
電話番号:022-717-7908
Email:tommo-pr*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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