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高機能反射板による電波伝搬環境の改善効果を容易に予測できる技術を開発 ─ 次世代無線通信技術Beyond 5Gの実現加速に期待 ─

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科通信工学専攻 准教授 今野佳祐
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 次世代の無線通信では、電波の伝搬方向を自在に制御できる高機能の反射板であるRIS(注1を用いた電波伝搬環境の制御技術が重要です。
  • モーメント法(注2の行列方程式をブロックに分解して逐次的に解くことで、高機能反射板を用いた電波伝搬環境下における無線通信システムの性能を行列積の形で解析的に表現することに成功しました。
  • 本成果により、アンテナや反射板の構造および周波数等が分かれば、複雑な実験や数値シミュレーションに頼ることなく、高機能反射板による電波伝搬環境の改善効果が予測できるようになりました。

【概要】

近年、電波の伝搬方向を自在に制御する高機能反射板の研究が盛んに行われています。このような高機能反射板は、いわゆるBeyond 5G(注3)と呼ばれるような次世代無線通信技術の実現において重要な技術と位置付けられていますが、その効果を明らかにするには、時間のかかる数値シミュレーションか、高コストの実験を行う他ありませんでした。

今回、東北大学大学院工学研究科通信工学専攻の今野佳祐准教授らは、英国サリー大学のガブリエル グラドニ教授、およびノッティンガム大学と共同研究を行い、高機能反射板を用いた電波伝搬環境下における無線通信システムの性能を、モーメント法のインピーダンス行列(注4)の積の形で解析的に表現する手法を開発することに成功しました。

この手法により、高機能反射板による電波伝搬環境の改善効果が複雑な実験や数値シミュレーションに頼ることなく予測できるようになり、次世代無線通信技術の実現を加速させることが期待されます。

本研究は、総務省の電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)の一環として実施され、2024年6月27日に論文誌IEEE Transactions on Antennas and Propagationに掲載されました。

図1. RISの一例(ダイオードのON/OFFのスイッチングでビーム方向が変化)

【用語解説】

注1. RIS
電磁波を反射させる素子(散乱体)を無数に配置した反射板。送信アンテナから到来した電磁波の位相を動的に変えて反射させ、狙った向きに電磁波を届けられる。RISはReconfigurable Intelligent Surfaceの略。

注2. モーメント法
数値解析法の1つで、本研究ではRISの素子(散乱体)からの電磁波の電磁界解析に用いた。

注3. Beyond 5G
現在の無線通信の主流である第5世代移動通信システム(5G)の機能がさらに高度化される6G以降の次世代移動通信システムの総称。2020年6月に総務省が「Beyond 5G推進戦略」を策定したことで、このキーワードは近い将来の移動通信システムとして広く認識されるようになった。5Gに対してBeyond 5Gでは超低消費電力、自律性、拡張性、超安全?信頼性といった機能が付加される。2030年頃から普及し始め、社会に変革をもたらすと期待されている。

注4. インピーダンス行列
インピーダンスとはある端子における電圧と電流の比である。本研究では、電磁波によるアンテナとRISの素子(散乱体)間の相互結合を表現するためにインピーダンス行列を用いた。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 通信工学専攻
准教授 今野佳祐
TEL: 022-795-7096
Email: keisuke.konno.b5*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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