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基板の表面処理で原子層二次元半導体の電荷制御に成功 ─ 従来より極めて超低消費電力の電子デバイス実現に道 ─

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 教授 好田誠
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 二次元半導体(注1と三次元半導体(注2のヘテロ構造(注3に着目し、三次元半導体の表面処理が二次元半導体の電荷状態に及ぼす影響を調査しました。
  • 三次元半導体に表面処理を施すことで、二次元半導体から三次元半導体への電子の移動効率と、二次元半導体の電荷状態の制御に成功しました。
  • 超低消費電力の情報演算、光を用いた情報の高速伝送、太陽電池や光センサーなどへの応用が期待されます。

【概要】

二次元ファンデルワールス材料(注4)を三次元半導体に積層した二次元/三次元半導体ヘテロ構造は、超低消費電力の情報演算、光を用いた情報の高速伝送、太陽電池や光センサーなど、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)を活用した社会を支える基盤材料として期待されています。この二次元/三次元半導体ヘテロ構造では、二次元半導体と三次元半導体の界面における電荷やスピンの移動効率が機器の動作性能を決定づける非常に重要な要素であると考えられています。

東北大学大学院工学研究科の小田川武史 大学院生、山本壮太 特任助教、好田誠 教授らは、NTT物性科学基礎研究所と共同で、異なる表面処理を施した三次元半導体に二次元半導体を積層し、二次元半導体の電荷状態を調べました。その結果、三次元半導体表面に存在する自然酸化膜(注5)の除去と未結合手(注6)の終端(注7)によって、二次元半導体から三次元半導体への電子の移動効率の向上と、二次元半導体の電荷状態を制御することに成功しました。

表面処理だけで界面での電荷の移動効率や二次元半導体の電荷状態を制御できるという本研究の成果は、二次元/三次元半導体ヘテロ構造の性能向上のみならず、量子情報技術やバレートロニクス(注8)への展開が期待されます。

本成果は、米国物理学会AIP Publishingが発行する材料科学分野の国際誌APL Materials に6月26日付で掲載されました。

図1. 本研究で検証した3種類の表面処理方法の概略図。A: 表面の洗浄のみを行ったGaAs基板に単層WS2を積層した。B: 表面の洗浄と自然酸化膜の除去を行ったGaAs基板に単層WS2を積層した。C: 表面の洗浄、自然酸化膜の除去、表面の硫黄終端を行ったGaAs基板にWS2を積層した。

【用語解説】

注1. 二次元半導体: 原子層が平面的に並んでいる厚さが非常に薄い半導体。

注2. 三次元半導体: 原子が三次元的に配置されている通常の半導体。

注3. ヘテロ構造: 異なる材料が積層された構造のこと。

注4. ファンデルワールス材料: 原子層同士が微弱なファンデルワールス力によって積層した半導体。本研究ではWS2原子層一層のみからなる二次元ファンデルワールス半導体の単層WS2を用いた。

注5. 自然酸化膜: 金属や半導体の表面が酸素と反応してできる酸化物の膜。

注6. 未結合手: 分子中や結晶中の原子の化学結合手のうち他の原子や分子と結合せず余っている結合手。ダングリングボンドとも呼ぶ。

注7. 未結合手の終端: 未結合手を他の原子と結合させること。

注8. バレートロニクス: 固体中の電子が流れる道や流れ方を決めている複数の自由度(バレー自由度)を利用したデバイス応用技術。従来よりはるかに低消費電力のデバイスなどを実現できると期待されている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 好田 誠
TEL: 022-795-7316
Email: makoto*material.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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