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ペロブスカイト型酸化物中への窒素導入形態の定性?定量分析に成功 ─高性能な可視光応答型光触媒開発の後押しに─

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所/材料科学高等研究所 助教 吉井丈晴
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 東北大学が独自開発した超高温?高感度昇温脱離(TPD)装置(注1を用いて、可視光に応答する光触媒として応用が期待されているペロブスカイト型酸化物(注2中にドープ(添加)された窒素種の分析を行いました。
  • 従来法では困難な窒素ドーパント(注3の導入形態の違いを識別することに成功しました。
  • 可視光応答する窒素ドープペロブスカイト型光触媒の開発を加速させることが期待されます。

【概要】

防汚や抗菌効果を持つ光触媒材料は環境浄化システムとして利用されています。従来型の光触媒である酸化チタンは紫外線下で働くため、屋内など紫外線が弱い場所では十分な効果を発揮しません。そのため可視光でも機能する光触媒材料が求められています。窒素ドープペロブスカイト型酸化物は、可視光応答性の光触媒として高い特性が得られることから注目されています。この際、ドーパントである窒素は酸化物格子間に侵入したり、酸素と置換されたりするなど、様々な形態で存在します。そのような窒素の導入形態は光触媒性能に直結するため、精密な定性?定量分析法の確立が極めて重要です。しかしながら、従来法として用いられるX線光電子分光法(XPS)(注4は表面近傍の情報しか得られず、材料内部の窒素の状態を調べることはできません。また、異なる窒素の導入形態の判別も困難でした。

東北大学多元物質科学研究所大学院生の清水俊介氏、吉井丈晴助教、大学院生の西川銀河氏(当時)、大学院生のJingwen Wang氏(当時)、Shu Yin教授、同大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の西原洋知教授、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターの小林英一主任研究員らからなる研究グループは、東北大学が独自に開発してきた超高温?高感度TPD装置を用いて、ペロブスカイト型酸化物中の窒素ドーパントの定性?定量分析に成功しました。TPD法により、従来法であるXPSのみでは判別困難な、材料内部の窒素の導入形態の違いを見分けることができます。本技術により、窒素の導入形態がより詳細に分析可能となり、高性能な窒素ドープペロブスカイト型光触媒の開発が加速されることが期待されます。

本研究成果は2024年6月27日(グリニッジ標準時)、化学分野の専門誌Chemical Scienceに掲載されました。

図1. (a)La2Ti2O7_Aと(b)La2Ti2O7_Bの試料写真。(c)La2Ti2O7_Aと(d)La2Ti2O7_BのXPSスペクトル。(e)La2Ti2O7_Aと(f)La2Ti2O7_BのTPDプロファイル。

【用語解説】

注1. 昇温脱離(TPD)装置
試料を加熱し、脱離した化学物質を質量分析計により同定する分析手法(Temperature Programmed Desorption法、TPD法)を用いる装置。東北大学では2100 ℃まで昇温可能な装置を独自開発し、炭素材料中の窒素種を10 ppmレベルの高精度で分析可能とした。詳細は参考文献1を参照。

注2. ペロブスカイト型酸化物
結晶構造の一種であるペロブスカイト構造を有する酸化物。

注3. ドーパント
半導体などの物質中にドープ(添加)された異種元素のこと。

注4. X線光電子分光法(XPS)
試料にX線を照射することで放出される電子(光電子)の運動エネルギーを測定し、試料に存在する元素の種類?存在量および化学結合状態を解析する手法。表面敏感な分析手法であることを特徴とする。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
(兼)材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
助教 吉井丈晴
TEL: 022-217-5627
Email: takeharu.yoshii.b3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
広報戦略室
TEL: 022-217-6146
Email: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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