2024年 | プレスリリース?研究成果
イメージセンシングで植物のストレス状況を瞬時に可視化 気候変動に伴う高ストレス環境下の食糧増産に道
【本学研究者情報】
〇生命科学研究科 教授 彦坂幸毅
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 農作物が生育の間に、どれだけのストレスを受けているのかを迅速に評価できれば、迅速な対応が可能となります。
- 光化学反射指数(PRI)というリモートセンシング(注1)指標を使い、ハイパースペクトルカメラ(注2)による観測で植物の光合成速度やストレス状況を、葉の脱落や色素量の低下が起こる前に高精度かつ迅速に評価する手法を確立しました。
- 本手法を農業生産の場に活用することで、ストレスへの対処を可能にし、収量増加につながると期待されます。
【概要】
食糧増産のニーズが高まっていますが、農作物はストレスに脆弱で、例えば潅水不足では萎れ?枯れに至る前に光合成が低下してしまうため迅速な対応が必要とされています。国立大学法人東北大学大学院生命科学研究科の博士後期課程学生(社会人ドクター)兼ソニーグループ株式会社 小川哲、沖縄県農業研究センター 玉城麿 上席主任研究員、臼井高江 職員、東北大学大学院生命科学研究科の彦坂幸毅 教授は、ハイパースペクトルカメラにより取得した画像から、植物のストレス状況を迅速かつ高精度で推定する手法を開発しました。
本研究では、光化学反射指数(PRI)と呼ばれる反射スペクトル指数を利用しました。PRIは、葉のストレス状況が悪化すると値が変化する指数ですが、野外の圃場における計測は実用化に至っていませんでした。本研究では、野外のPRI計測を阻害する要因を特定し、植物のストレスを評価すべき葉を識別?抽出する方法を開発することで、葉が重なり土壌なども映るような圃場の計測において高精度なストレス推定を可能にしました。この手法を応用することにより、迅速なストレスへの対処を可能にし、収量増加につながると期待されます。
本論文は6月18日に科学誌Scientia Horticulturae電子版に掲載されました。
図1. 温室内で栽培したトマトをハイパースペクトルで撮影し、PRIの値を色で表した図。暖色から寒色になるにつれてストレスが高まることを示す。左は全画素を、右はストレスを評価すべき葉だけを抽出したもの。左図は一見カラフルであるが、防草シートやストレス評価に適さない影葉が含まれる。右図ではストレス評価に適した葉のみが抽出される。
【用語解説】
注1. リモートセンシング:遠隔から対象を観測する手法。
注2. ハイパースペクトルカメラ:各画素内の波長スペクトルを観測できるカメラ。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学大学院生命科学研究科 教授 彦坂幸毅
TEL:022-795-7732
Email: hikosaka*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています