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代謝や食欲を制御するQRFP受容体の構造を解明

【本学研究者情報】

〇大学院薬学研究科分子細胞生化学分野
教授 井上 飛鳥(いのうえ あすか)
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 代謝や食欲調節に関わるペプチドホルモン「QRFP」が結合した、QRFP受容体GPR103とGqタンパク質三量体との複合体構造の構造解析に成功しました。
  • QRFPの結合様式と受容体活性化機構を明らかにし、細胞外領域がホルモンの認識に重要であることを示しました。
  • 本研究は、GPR103を標的とした代謝や食欲調節の治療薬の設計への道を拓くものです。

【概要】

 今回、東京大学大学院理学系研究科の濡木理教授らのグループは、東北大学大学院薬学研究科の井上飛鳥教授との共同研究のもと、内在性ペプチドQRFPによって活性化したQRFP受容体(GPR103)と三量体Gタンパク質Gq (注1)とのシグナル伝達複合体の立体構造をクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)(注2) による単粒子解析(注3)によって決定しました。

 QRFPはペプチドホルモン(注4)であり、受容体であるGPR103を活性化することで、エネルギー代謝や食欲の制御に重要な役割を果たします。しかし、どのようにQRFPがGPR103を活性化するのか、その詳細なメカニズムは不明でした。

 今回、決定した構造を基に、QRFPの結合様式と受容体の活性化メカニズムを明らかにしました。QRFPはGPR103の膜貫通領域から細胞外領域にわたる独特の結合様式とダイナミクスを持ち、高い親和性で受容体と結合できることがわかりました。この研究成果から、QRFP-GPR103システムを標的としたより効果的で安全な治療薬の設計が可能となり、代謝および食欲障害の治療薬開発への貢献が期待されます。


GPR103-Gq複合体の全体構造

【用語解説】

注1. 三量体Gタンパク質Gq:
Gタンパク質は、細胞内情報伝達に関わるGTP結合タンパク質であり、Gα、Gβ、Gγサブユニットの三量体により構成されている。活性化されたGタンパク質共役受容体と結合したGタンパク質三量体では、GDP-GTP交換反応が起き、GαとGβ-Gγの二つに解離する。解離したサブユニットが下流のシグナル伝達因子と結合し活性化することで、細胞にさまざまなシグナル応答が生じる。Gαサブユニットは大きくGs、Gi、Gq/11、G12/13の4種類に分別され、特にGqは、下流で細胞内カルシウム濃度を上昇させることで様々なシグナルを伝える。

注2. クライオ電子顕微鏡:
液体窒素(-196℃)冷却下でタンパク質などの分子に対して電子線を照射し、試料の観察を行うための装置。タンパク質や核酸をはじめとする生体高分子の像を多数撮影することで立体構造の決定を行う、単粒子解析法に用いられる。

注3. 単粒子解析:
多数の均一な粒子を観察、撮影し、画像処理によって粒子の詳細な構造を得る手法。単一の撮影像よりも分解能を向上させることができるほか、様々な方向を向いた粒子を撮影することで、3次元立体構造を把握することが可能となる。

注4. ペプチドホルモン:
血流へ分泌され、内分泌機能を持っているペプチド類の総称。ペプチドホルモンは血液を通し体の細胞のすべてに拡散、それらの標的細胞の表面で固有の受容体と相互作用することで生理機能を発揮する。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科分子細胞生化学分野
教授 井上 飛鳥(いのうえ あすか)
TEL:022-795-6861
Email:iaska*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科?薬学部 総務係
TEL:022-795-6801
Email:ph-som*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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