2024年 | プレスリリース?研究成果
N?O?にさらすとバジルの精油成分が変化する ~プラズマ技術を利用した植物二次代謝産物の増産~
【本学研究者情報】
〇生命科学研究科 教授 東谷篤志
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- プラズマ技術を用いて生成したN2O5(五酸化二窒素)ガス(注1)にバジルをさらすと、フェニールプロパノイド、シネオール、シンナムアルデヒド(桂皮酸アルデヒド)やフラボノイドなど精油成分となる植物二次代謝産物(注2)が増加することがわかりました。
- N2O5によりジャスモン酸シグナル経路が活性化し、二次代謝産物の合成が誘導されました。
- 二次代謝産物は植物において病害などに対抗する働きがあり、また、私たちの食品や薬の有効成分としても利用されます。
【概要】
バジルをはじめとするハーブは、香り豊かな多数の植物二次代謝産物からなる精油を産生します。精油には、害虫による食害やカビなどによる病害を抑える働きがあります。また、これら二次代謝産物は食品や薬の有効成分として、私たちの健康維持にも広く利用されています。
東北大学 大学院工学研究科?非平衡プラズマ学際研究センターの金子 俊郎 教授らは、空気と電気からN2O5を選択的に合成するプラズマ装置の開発に成功し、部局横断的な共同研究を進めてきました。今回、生命科学研究科の立石 莉英(当時 大学院生)、岸田 なつみ 特任研究員、藤井 伸治 准教授、東谷 篤志 教授らは、バジルの栽培時に金子教授らが開発したプラズマ装置を利用してN2O5ガスを曝露することで、精油成分の合成が促進されることを明らかにしました。栽培時の農薬使用量の低減、食の安全性の向上、さらには植物がつくる有用な二次代謝産物の増産につながることが期待されます。
本成果は科学誌Scientific Reportsに2024年6月4日付けで掲載されました。
図1. N2O5の曝露によりバジル葉において増減した二次代謝産物とその合成に関わる遺伝子 (立体は二次代謝産物量の変化、斜体は酵素遺伝子の発現量の変化。赤字:増加、橙字:増加と減少、青字:減少、黒字:変化なし。)
【用語解説】
注1.N2O5ガス:五酸化二窒素は反応性の高い活性窒素種(reactive nitrogen species: RNS)の1つで、水と反応すると硝酸になります(N2O5 + H2O → 2HNO3)。通常の合成法では複数の危険な原材料を必要とするため、また、大気中の水蒸気など水分と容易に反応するため安定に保存することも難しい気体で、これまでは広く使用されていませんでした
注2. 二次代謝産物:その生存や生殖に必須の糖、有機酸、アミノ酸、脂質など、種を越えて普遍的な化合物群を一次代謝産物とよび、二次代謝産物は生命維持には必須ではなく、生存に有利に働く多種多様な化合物で、種ごとに多様性がみられ、その総数は20万種類を超えるといわれています。植物の香り成分、生薬の成分やフラボノイド類などが有名です。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 東谷 篤志
TEL: 022-217-5715
Email: atsushi.higashitani.e7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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