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筋骨格ロボットの筋肉冗長性を十分に活用する制御手法を開発 ─過酷な環境でも自律的に動作するロボットの実現に期待─

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 ロボティクス専攻
教授 林部充宏
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 筋骨格ロボット(注1の筋肉であるアクチュエータの冗長性を活用するために、関節が外力に対して元に戻ろうとする剛性の調節やアクチュエータの故障への適応を自律的に実現する制御手法を開発しました。
  • ニューラルネットワーク(注2が、ロボットの逆静力学モデル(注3(目標の姿勢に対する筋肉アクチュエータ活動度の関係性)を学習し、制御精度を維持します。
  • アクチュエータの故障や地面との接触といった状態変化に対して、ネットワーク再学習などの介入無しで自律的な適応が可能となるため、不確実な環境下での筋骨格ロボット応用の促進が期待されます。

【概要】

動物の動作は複数の筋肉が協力して作用することで実現されており、運動学などの分野ではこれを冗長性と言います。一部の筋肉が損傷した場合でも他の筋肉がその機能を補い、目的の動作が実現できることがありますが、これには冗長性が一役買っています。こういった動物の生体構造から着想を得た、冗長な筋肉(アクチュエータ)構成を持つ筋骨格ロボットは、可変関節剛性や筋肉の故障に対する強靭性といった利点を持ちます。一方、その複雑な構造は制御を困難なものとし、制御解が無数にあり得るため、既存手法では筋肉が破損した場合に手動の再適応学習が必要であるなど、ロボットの冗長性の利点を十分に活用できていませんでした。

東北大学大学院工学研究科の杉山拓大学院生と林部充宏教授は、英国ケンブリッジ大学のElijah Almanzor大学院生、Arsen Abdulali博士、Fumiya Iida教授らと共同で、冗長性の利点を最大限活用するためのモデルフリーの逆静力学コントローラを提案しました。筋骨格脚ロボットシミュレーションを用いた実験で、提案手法はロボットの重量変化や筋肉の故障、地面との接触などに対して再学習などの介入を一切せず自律的に適応し、妥当な制御精度を維持することに成功しました。

本研究成果は、科学誌Bioinspiration & Biomimeticsに2024年6月10日付けで掲載されました。

図1. シミュレーション実験に利用した筋骨格脚ロボット (軌道追従リーチング(左)とスクワット運動(右)での制御精度検証)

【用語解説】

注1. 筋骨格ロボット:動物の筋骨格系に着想を得た、硬い骨格と柔らかい筋肉(アクチュエータ)で構成されるロボット。

注2. ニューラルネットワーク:人間の脳内の神経細胞である「ニューロン」を語源とし、脳の神経回路の構造を数学的に表現した手法である。「入力を線形変換する処理単位」がネットワーク状に結合した数理モデルであり、人工知能(AI)の問題を解くために用いられる。

注3. 逆静力学モデル:目標のロボットの姿勢や手先の力を生成するのに必要となる筋肉アクチュエータ活動度を数式で表したもの。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 ロボティクス専攻 
教授 林部 充宏
TEL: 022-795-6970 
E-mail: hayashibe@tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室 担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898 
E-mail: eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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