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自分で集合と散開をする群体分子ロボットを開発 ─病気の自動的なピンポイント診断と治療への適用に期待─

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 ロボティクス専攻
准教授 野村 M. 慎一郎
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 群体分子ロボット(注1の自動集合と散開を可能にする、DNAを基盤とした分子コントローラーの開発に成功しました。
  • 分子コントローラーは分子ロボットの群れと共存し、DNA回路(注2のプログラムに従いDNA分子を出力することで分子ロボットを制御します。
  • 将来的に、より高度な自律分子システムとして動的に組み立て?分解をし、タスクを実行する分子ロボットの開発につながると期待されます。

【概要】

「分子ロボティクス」と呼ばれる生体内外で狙った働きをさせることで病気の治療や診断に役立つ分子ロボットの研究開発分野に注目が集まっています。

東北大学大学院工学研究科の野村 M. 慎一郎准教授と川又生吹助教(現、京都大学大学院理学研究科准教授)、大学院生の西山晃平氏(現、独ヨハネス?グーテンベルク大学マインツ在籍)、京都大学大学院理学研究科の角五彰教授らは、無数の分子ロボットを望み通りに動作させることにつながる分子制御技術を開発しました。角五教授らのこれまでの研究で、ばらばらに滑走して運動するタイプの分子ロボット(注3)を外部からの操作により、群体として組み立てたり、解体させたりすることに成功していました。本研究では、人工的に設計したDNAと酵素からなるDNA回路で構成された「分子コントローラー」を構築し、分子ロボットに共存させることで、プログラムに従い自ら組み立て?分解をする分子システムの開発に成功しました。本技術は、分子ロボティクスの分野において大きな前進であり、将来的な分子ロボットの利用や医療応用などへの実用化に向けた重要な一歩となります。

本研究成果は、2024 年6月1日午前3:00(日本時間)に科学誌Science Advancesに掲載されました。

図1. 分子ロボットの組み立てと分解の信号を出力する分子コントローラーの模式図

【用語解説】

注1. 分子ロボット:センサ(感覚装置)、プロセッサ(計算機)、アクチュエータ(駆動装置)などのロボットを構成するデバイスが分子レベルで設計されており、それらを一つに統合することで構成される分子のシステム。今回の分子ロボットは直径25 nm、全長約6 ?mの管状の個体であり、数十?m幅の束に組み立てられ、そして分解されるシステム。

注2. DNA回路:DNA分子の結合と解離、合成と切断を利用し特定の機能や反応を実現するために設計された分子システム(例:DOI: 10.1007/s00354-022-00156-4)。

注3. ばらばらに滑走して運動するタイプの分子ロボット:基板に固定されたリニア分子モーターであるキネシンと、そのキネシンによって滑走運動する細長い微小管分子、そして微小管に修飾した人工設計DNA分子の組み合わせで構成されており、外部操作によって組み立て?分解を行う(例:DOI:10.1038/s41467-017-02778-5)。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科ロボティクス専攻
准教授 野村 M. 慎一郎
TEL: 022-795-6910
Email: smnomura*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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