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骨粗しょう症治療薬の新たな候補化合物イリジマシドAの化学合成に成功

【本学研究者情報】

〇大学院生命科学研究科 助教 梅原厚志
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • イリジマシドAは骨粗しょう症治療薬のリード化合物(注1)となりうる医薬的に有用な天然有機化合物です。
  • ニッケル触媒とジルコノセン(注2)という添加剤を用いるケトンカップリング反応(注3)を駆使して、イリジマシドAの化学合成を世界で初めて達成しました。
  • イリジマシドAと同様の構造をもつ天然有機化合物の合成にも応用可能で、創薬や有機合成化学の進展に貢献すると期待される成果です。

【概要】

イリジマシドAは、沖縄県沖で採取された海洋シアノバクテリアOkeania属から単離?構造決定されたマクロリド天然物です。この海洋マクロリド(注4)は、マウス由来の培養細胞において、破骨細胞(注5)の分化を抑制する作用を有していることから、新しい骨粗しょう症治療薬のリード化合物として期待されています。しかし、化学合成の例は報告されていませんでした。

東北大学大学院生命科学研究科の梅原厚志助教と佐々木誠教授、諏訪朝也氏(博士後期課程学生)は、ニッケル触媒とジルコノセンを用いるケトンカップリング反応を駆使した独自の合成戦略により、イリジマシドAの世界初となる化学合成に成功しました。開発した新たな合成戦略は、マクロリド主要骨格の柔軟な合成を可能にするものであり、イリジマシドAのみならず構造的に多様な幅広いマクロリド天然物の合成にも応用可能であると考えられます。したがって本研究の成果は、有機合成化学、天然物化学、創薬化学研究の発展に大きく寄与すると期待できます。

本研究の成果は、2024年5月15日付で米国化学会誌Organic Lettersにオンライン掲載されました。

図1. イリジマシドの構造

【用語解説】

注1. リード化合物: 医薬品開発の出発点となる新薬候補化合物のこと。天然物は、構造および生物活性の多様性が高く、有用なリード化合物となる。

注2. ジルコノセン: ビス (シクロペンタジエニル) ジルコノセンジクロリドのこと。カップリング反応を促進する添加剤として使用している。

注3. カップリング反応: 2つの化学物質を選択的に結合させる反応のこと。溝呂木-Heck反応、根岸カップリング、鈴木-宮浦カップリングが代表的であり、日本人化学者の名がつく反応が多い。天然物合成や医薬品合成に多用されている。

注4. マクロリド: 12以上の炭素や酸素原子から構成される大環状のラクトンを有する天然有機化合物の総称。エリスロマイシンやクラリスロマイシンといった抗生物質が有名であり、様々な生物活性を有することで知られている。

注5. 破骨細胞: 破骨細胞は、古い骨を吸収することで骨の新陳代謝を担う重要な細胞であり、血液中のカルシウム濃度を一定に調節する働きも担っている。しかし、その過剰な活性化は骨粗しょう症や関節リウマチ、歯周病、がん骨転移など、様々な疾患に伴う骨破壊の原因となる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
助教 梅原厚志
TEL: 022-217-6214
Email: atsushi.umehara.e3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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