2024年 | プレスリリース?研究成果
少量の血液から脳腫瘍とその悪性度の判別に成功 ‐ラベルフリーの分光法で血中バイオマーカーを高感度検出‐
【本学研究者情報】
〇大学院医工学研究科
教授 松浦 祐司
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 血液の赤外吸収特性を分析することにより、脳腫瘍の悪性度を判別することに成功しました。
- 色素や抗体といった標識を添加しないラベルフリーな分光法であり、特殊な装置や技術を用いずに微量な血液を簡易な測定系を用いて分析することが可能です。
- 本手法は、将来的には手術前診断の一助になることが期待されます。
【概要】
がん組織そのものへのアクセスが難しい脳腫瘍では、血液など患者さんの負担が少ない検体から疾患に関する情報を得ることが期待されます。特に、神経膠腫(注1)の治療方針決定に際しては、腫瘍の摘出前に予後(悪性度)に関する情報を得たいという医療現場からの要望がありました。しかしこれまでは、神経膠腫の悪性度を決定づけるイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)遺伝子の変異状態(注2)を知るには、摘出後の腫瘍組織の解析を待たなければなりませんでした。
東北大学大学院医工学研究科 松浦祐司教授の研究グループは、同大学院医学系研究科神経外科学分野 金森政之准教授らと共同で、神経膠腫の患者群と、健常対照者群の血液の赤外吸収スペクトルを解析することにより、神経膠腫の発症とIDH遺伝子の変異状態を早期に判別することに成功しました。また、スペクトルの特徴から、遺伝子変異に伴う血中タンパク質の明らかな凝集傾向など、疾患の機序解明につながる情報が得られました。
本手法は、特定の試薬や試料の前処理が不要で、かつ簡易な装置で実施可能な赤外分光測定を用いています。分光法で血中バイオマーカーを網羅的かつ高感度に検出することにより、疾患や病態の高精度判別が可能となることが期待されます。
本研究成果は、2024年2月16日にBMC Cancer誌に掲載されました。
図1. 分光法からの罹患判別の概念
【用語解説】
注1. 神経膠腫(しんけいこうしゅ):
悪性脳腫瘍のひとつ。原発性脳腫瘍の大部分を占める。
注2. IDH遺伝子変異:
一部の神経膠腫で見られ、腫瘍の発生/進展に関わる物質を産生する。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医工学研究科 松浦祐司
TEL: 022-795-7108
Email: yuji.matsuura.c1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医工学研究科広報担当
Email: bme-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)