本文へ
ここから本文です

いつもの食事が血液中の脂質に反映される 一般住民4,000人の脂質濃度と食習慣との相関を解析

【本学研究者情報】

東北メディカル?メガバンク機構
基盤情報事業部長?教授 木下賢吾

機構ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 東北メディカル?メガバンク計画(注1のコホート調査(注2の参加者、約4,000人分の血漿中の脂質濃度と食習慣を関連解析したところ、数十種の脂質分子と複数の食習慣との間の相関を発見しました。
  • このうち、近年様々な健康効果が知られるようになってきた奇数脂肪酸(注3,4の濃度を高める上で、日本人集団において乳製品摂取が有効である事が示唆されました。乳製品摂取と奇数脂肪酸の相関の検出は、アジア地域では初めてとなります。また、特定の脂質がこの相関を介する可能性が示唆され、乳製品由来の奇数脂肪酸代謝を解明するヒントが得られました。
  • さらに、菓子類の摂取がオメガ3脂肪酸(注5を減らし、オメガ6脂肪酸(注6を増加させる可能性があることが分かりました。菓子類の過剰摂取が必須脂肪酸のバランスを崩し、心血管疾患などのリスクを高める可能性が示唆されました。

【概要】

 血液中の脂質濃度は、私達が毎日食べる食事から直接的な影響を受けており、健康状態や疾患の発症に深く関係しています。しかし、アジア人集団で数千人の規模で両者の関連を解析した例はこれまでありませんでした。

 東北大学東北メディカル?メガバンク機構(ToMMo)は、1万人近いコホート調査参加者に対して血漿中脂質濃度のメタボローム解析を実施しています。ToMMo生命情報システム科学分野の木下賢吾教授らの研究グループは、このうち約4,000人分について、食習慣と血漿中の脂質濃度を解析し、多くの有意な相関を見出しました。これらの相関には、世界の様々な集団で検出されてきたバイオマーカーが含まれており、特に乳製品摂取と奇数脂肪酸の関連については、アジア地域では初めて検出されました。さらに、この乳製品と奇数脂肪酸の相関が、スフィンゴ脂質(注7を介したものである可能性が示唆されました。これらに加えて、菓子類摂取がオメガ3脂肪酸を減らし、オメガ6脂肪酸を増加させる可能性があることが示されました。

 この研究成果は、国際学術誌 Metabolomicsに2024年3月5日(日本時間)にオンライン掲載されました。

図1. 乳製品摂取と、奇数脂肪酸を有する可能性のある各脂質の相関制御ネットワーク。このネットワーク上の矢印は、乳製品摂取量と矢印の先の脂質との間の相関を、矢印の元の脂質を用いて制御した時に、相関が有意ではなくなった場合に2つの脂質を繋いでいる。これらの脂質は全て、他の脂質で乳製品摂取との間の相関を制御しない場合は、P<0.001レベルで乳製品摂取と正に相関している。相関が抑制される程度に応じて、矢印の色と形が変化している。

【用語解説】

注1. 東北メディカル?メガバンク計画:
東日本大震災が被災者に与えた長期的影響と、がんや心血管疾患などの主要疾患の発症率に及ぼす遺伝子と環境の相互作用を評価するために、宮城県、および岩手県を中心として立ち上げられたコホート調査およびバイオバンク事業。一般住民を対象とした地域住民コホート調査と家系情報付きの三世代コホート調査があり、本研究では地域住民コホート調査参加者を対象としている。2015年度より、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が研究支援担当機関の役割を果たしている。
https://www.megabank.tohoku.ac.jp/

注2. コホート調査:
一定の集団について、長期に渡って生活習慣と疾患の発症について調査し、生活習慣または特定の事象の暴露と疾患発症リスクとの関係を明らかにする疫学の分析手法。

注3. 脂肪酸:
脂質の一種で、炭素、水素、酸素から成っており、炭素原子が鎖状につながった構造の一方の端に、カルボキシル基がついている。生体内には、アルブミンと結合して遊離状態で存在しているほか、中性脂肪やリン脂質などのより大きな脂質の構成要素として存在している。

注4. 奇数脂肪酸:
炭素の鎖の長さが奇数個である脂肪酸。近年、健康リスクを低減させる効果が注目を集めている。

注5. オメガ3脂肪酸:
炭素の鎖のメチル末端から数えて3つ目の結合が二重結合をもつ脂肪酸で、人が体内で合成できない必須脂肪酸。

注6. オメガ6脂肪酸:
炭素の鎖のメチル末端から数えて6つ目の結合が二重結合をもつ脂肪酸で、人が体内で合成できない必須脂肪酸。

注7. スフィンゴ脂質:
生体膜を構成する主要な脂質の一つで、シグナル伝達など複数の機能を担っている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学東北メディカル?メガバンク機構
基盤情報事業部長
生命情報システム科学分野 教授
木下 賢吾(きのした けんご)
電話番号:022-274-5952

(報道に関すること)
東北大学東北メディカル?メガバンク機構
広報戦略室長
長神 風二(ながみ ふうじ)
電話番号:022-717-7908
Email:tommo-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

このページの先頭へ