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メタマテリアルで6G通信向け周波数チューナブルフィルタを開発 - 環境やセキュリティなどテラヘルツ波を使う様々な産業分野での活用にも期待 -

【本学研究者情報】

大学院工学研究科ロボティクス専攻
教授 金森 義明
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 次世代の第6世代移動通信システム(6G)(注1通信帯で利用できる周波数のチューナブルフィルタ(注2を開発しました。
  • シリコン製の機械式屈折率可変メタマテリアル(注3をファブリペロー共振器(注4内に搭載することで優れた光学特性(高透過率)と機械特性(機械的信頼性)を兼ね備えています。
  • 6Gをはじめ、医療?バイオ?農業?食品?環境?セキュリティなど幅広い分野での応用が期待されます。

【概要】

 世界ではすでに第5世代移動通信システム(5G(注5の次の世代「6G」を見据えた研究開発が始まっており、5G用の電波(ミリ波)よりさらに波長が短いテラヘルツ波(注6が使用されることが明示されています。6Gでは0.3テラヘルツ(THz)近傍の周波数帯の電波が用いられることが想定されており、不要な周波数の電波を除去して特定周波数の電波を通過させるフィルタが必要となります。近年、6G用周波数チューナブルフィルタの開発が進んでいます。

 東北大学大学院工学研究科ロボティクス専攻の金森義明教授らの研究グループは、シリコン製のサブ波長格子(注7で構成される機械式の屈折率可変メタマテリアルを新たに開発し、ファブリペロー共振器内の屈折率を制御することにより、狙った周波数域の電波を通過させる周波数チューナブルフィルタを開発しました。開発したフィルタは、シリコン半導体微細加工技術を用いて作られるため、機械的信頼性と小型?量産性に優れています。

 本技術は、将来的にはテラヘルツ波を利用するスキャニングやイメージングへの応用展開が期待でき、医療?バイオ?農業?食品?環境?セキュリティなど幅広い分野での活用が期待されます。2022年に設置した国内初のメタマテリアルを専門とする研究センター「メタマテリアル研究革新拠点」(注8)を基盤に実装化に向け、研究をさらに加速させていきます。

 本研究成果は、2024年2月9日付で、米国光学会誌 Optics Lettersに掲載されました。

図1. 開発したチューナブルフィルタの断面模式図。

【用語解説】

注1. 第6世代移動通信システム(6G):
現行の携帯電話で使われている 4G、5Gに続く無線通信システム。2030年代の商用化が見込まれている。通信速度は5G の10 倍以上の毎秒 100ギガビット級(ギガは10億)が想定されている。高解像度の3D映像を触覚情報などと合わせてリアルタイムで送受信できるようになる。医療分野では遠隔での治療や診察、教育分野では臨場感のあるリモート授業が実現する。

注2. チューナブルフィルタ:
周波数特性を変えることができるフィルタ。通信システムでは、例えば使用する電波の周波数帯域が広く一般的な周波数固定のフィルタでは対応できない時に必要となる。

注3. メタマテリアル:
制御の対象とする電磁波の波長より小さな単位構造で構成され、自然界にはないような電磁波応答を示す人工光学物質。空間的な局在電場モード(光の状態密度)を自在に設計し得る最小の光共振器とも言え、電磁波の応答特性は主にメタマテリアルの形状で決まる。光共振器の設計次第で実効的な屈折率を自在に制御できる。要求に応じた屈折率を持つ光学材料を設計に基づき人工的に実現でき、負の屈折率、透明マント(クローキング)、完全レンズなどの実現可能性が示されている。

注4. ファブリペロー共振器:
高い反射率を持つ2枚の板を向かい合わせた構造で、共振器内で起こる電波の干渉を利用して特定周波数の電波のみを透過させる。

注5. 第5世代移動通信システム(5G):
2020年3月からサービスが開始された、一世代前の4Gと並ぶ現行の通信規格。4Gと比較して、高速大容量、多数同時接続、超低遅延といった特徴がある。さまざまな電子機器がネットワークに接続されるようになる。

注6. テラヘルツ波:
光波(赤外線)と電波(ミリ波)の中間にあたる帯域の電磁波で波長は約10μm(周波数30THz)から約1mm(周波数300GHz)。赤外線のように検査?分析に用いる他、波長約10mm(30GHz)から約10cm(周波数3GHz)のマイクロ波を用いる現在の通信(5G)に続く次世代通信(6G)用の電磁波として期待されている。

注7. サブ波長格子:
制御対象とする入射波長よりも小さな周期構造で構成される構造体。制御対象とする入射波長よりも小さい周期構造は、ある屈折率を持つ一様な媒質と等価であり、その屈折率は構造やそれを構成する物質の屈折率で決まる。構造を人工的に制御することによりサブ波長格子の等価屈折率を変化させることができる。

注8. 研究センター「メタマテリアル研究革新拠点」:
2022年6月1日設置。拠点長は東北大学大学院工学研究科 教授 金森義明。
https://web.tohoku.ac.jp/kanamori/0meta-ric/index.html

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 金森義明
TEL: 022-795-4893
Email: ykanamori*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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