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スピン波の伝わる方向を制御する周期構造体を開発 ~より低消費電力で高集積の次世代デバイス実現に期待~

【本学研究者情報】

〇電気通信研究所 准教授 後藤太一
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 磁石が作り出す波であるスピン波(注1)は、発熱が少なく、低消費電力かつ高集積化が可能であるなど次世代デバイスへの応用が期待されていますが、実用化のためには波が伝わる方向を制御する技術が必要でした。
  • スピン波が流れる伝導電子が無い磁性絶縁体の上に六角形パターンに銅製ディスクを作製し、スピン波の反射率が、入射角度に依存しづらくなることを発見しました。
  • 本技術により、半導体回路だけで作製した電子デバイスでは得られない波特有の重ね合わせ等の機能を実現できると期待されます。

【概要】

従来、半導体回路では情報伝達のために電流が用いられてきました。一方、スピン波は磁石によって作り出される波で、スピンの波を介して情報を伝達することで低消費電力かつ高集積化を実現できると期待されています。

東北大学電気通信研究所の後藤太一准教授らと信越化学工業株式会社による研究グループは、スピン波を用いた新しいデバイスを開発してきました。今回、二次元マグノニック結晶(注2という周期的な構造体を開発し、スピン波を照射したところ、入射角度を10度から30度までの範囲で変えても反射するスピン波の周波数帯域がほとんど変わらないことを明らかにしました。

本技術はスピン波の制御につながるものであり、実用化により、次世代の高性能デバイス、特に人工知能や無人化技術を支える通信デバイスの効率化と小型化が期待されます。今後は、二次元マグノニック結晶を利用したスピン波の方向制御の実証と、それを活用した機能的素子の開発を目指しています。

本成果は、1月30日(現地時間)、応用物理分野の専門誌Physical Review Appliedに掲載されました。

図1. 本研究で開発した二次元マグノニック結晶を斜め上から見たイラスト。磁性ガーネット上に周期的に銅製ディスクが並べられています。

【用語解説】

注1. スピン波:スピンとは電子の自転運動であり、自転運動による微小な磁石としての性質。スピン波は、スピンの集団運動であり、個々のスピンのコマ運動(歳差運動)が空間的にずれて波のように伝わっていく現象。

注2. 二次元マグノニック結晶:平面上に周期的な磁気のパターンをもつ人工構造物。エレクトロン(電子)と同様に、量子化されたスピン波は、マグノンと呼ばれ、マグノンに対する結晶は、マグノニック結晶と呼ばれます。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 電気通信研究所
准教授 後藤太一
TEL: 022-217-5489
Email: taichi.goto.a6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 電気通信研究所 総務係
TEL: 022-217-5420
Email: riec-somu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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