2024年 | プレスリリース?研究成果
小惑星リュウグウに彗星塵が衝突した痕跡を発見 太陽系遠方から有機物を含む彗星の塵が供給されていたことを示唆
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科地学専攻
助教 松本 恵(まつもと めぐみ)
大学院理学研究科地学専攻
教授 中村 智樹(なかむら ともき)
【発表のポイント】
- 小惑星探査機はやぶさ2(注1)が小惑星リュウグウ(注2)から回収した岩石粒子の表面を走査型電子顕微鏡(注3)で観察し、小惑星表面に彗星の塵が衝突してできた溶融物を発見。
- 3次元CT観察(注4)や化学組成分析を行った結果、溶融物は、彗星の塵とリュウグウの構成物が高温で融けて混ざり合うことで生成したことが分かった。
- 衝突した彗星の塵の中には有機物が含まれていたと考えられ、生命の起源物質を含む小さな塵が、宇宙から地球軌道付近に飛来していたことが分かった。
【概要】
小惑星の表面は大気に覆われていないため、太陽風(注5)や宇宙の塵が降り注ぎ、小惑星最表面の物質の化学組成などの特徴を変化させます。東北大学大学院理学研究科地学専攻の松本恵助教と中村智樹教授ら、立命館大学、京都大学、東京大学などとの共同研究チームは、探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った岩石粒子の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、小惑星表面に宇宙の小さな塵が衝突してできた大きさ5~20マイクロメートル程度の溶融物を複数発見しました。溶融物の3次元CT観察や化学組成分析を行った結果、溶融物は、衝突した彗星由来の塵とリュウグウの表面物質が高温で融けて混ざり合うことで生成したことが分かりました。
彗星は太陽系の遠方で形成され、生命の材料となり得る有機物を多く含むことが知られています。彗星塵の衝突による溶融物の形成は、現在から約500万年前の間に、現在の小惑星リュウグウの軌道上で起こった可能性が高く、リュウグウには、ごく最近まで、太陽系の遠方から有機物を含む彗星の塵が供給されていたと考えられます。
本研究の成果は、2024年1月19日に米国科学振興協会(AAAS)が発行する学術誌Science Advancesに掲載されました。
図1. (左)リュウグウ粒子表面に見つかった溶融物。丸みを帯びており、水滴のような見かけをしている。(右)溶融物断面のCT像。多くの気泡を含んでいることがわかる。
【用語解説】
注1. 小惑星探査機「はやぶさ2」:
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する小惑星探査機。太陽系の起源と進化、地球の生命の起源の解明を目的として、小惑星リュウグウの近傍観測とサンプルリータンを行った。
注2. 小惑星リュウグウ:
そろばん玉のような形状をした地球近傍の小惑星。リターンサンプルの分析により、水や有機物を含み、太陽系遠方の低温領域で形成した天体に起源をもつことが明らかになった。
注3. 走査型電子顕微鏡:
細く絞った電子ビームを試料に照射して、試料表面の観察を行う顕微鏡。ナノスケールの微細組織観察を行うことができる。
注4. CT観察:
試料にX線を照射して、透過したX線を検出することで試料の内部を非破壊で観察する手法。
注5. 太陽風:
太陽から吹き出るプラズマ(電気を帯びた希薄なガス)の風。
「はやぶさ2初期分析チーム」につきましては、
?「はやぶさ2」初期分析チーム
2021年6月より試料の分析開始(https://www.
?リュウグウはイヴナ型炭素質隕石でできている(https:/
?炭素質小惑星リュウグウの形成と進化:
?小惑星リュウグウ試料の希ガスおよび窒素同位体組成―
?「はやぶさ2」
?日焼けで隠された水に富む小惑星リュウグウの素顔(https
?
?小惑星リュウグウ試料中の黒い固体有機物(https://
?炭素質小惑星(162173)
?小惑星リュウグウでみつかった窒化した鉄の鉱物―
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科地学専攻
助教 松本 恵(まつもと めぐみ)
Email: m_matsumoto*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院理学研究科地学専攻
教授 中村 智樹(なかむら ともき)
TEL: 022-795-6651
Email: tomoki.nakamura.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
TEL: 022-795-6708
Email: sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)